経営事項審査(経審)は、建設業者が公共工事に入札するために欠かせない重要な手続きです。中でも「X評点(経営規模)」は、企業の規模や財務体質を示す指標として大きな影響力を持ちます。本記事では、X評点の仕組みや算出方法、そして点数を上げるための具体的な対策を、初心者にもわかりやすく解説します。
経営事項審査(経審)の基礎知識
経審とは?その目的と役割
経営事項審査(通称:経審)は、国や地方自治体が公共工事の発注先を選定する際に、建設業者の経営状況や技術力などを数値化・点数化して評価する制度です。この点数をもとに、入札参加資格(総合評定値:P点)が決定されます。
経審は建設業法に基づいて実施され、公共工事における品質確保・公正な競争を促進する目的を持ちます。
経審と建設業許可の関係
経審は「建設業許可」を取得している事業者だけが受けられる制度です。許可を前提として、過去の工事実績や経営状態、技術力、社会性などを総合的に審査します。
注意点として、許可業種ごとに経審を受ける必要があり、特定建設業・一般建設業の区分によっても申請内容が異なります。
経審結果の有効期限
経審の結果(P点)には「審査基準日から1年7ヶ月間」の有効期限が設定されています。この期間内でなければ入札に参加できません。更新漏れがあると、資格喪失のリスクもあるため、期限管理は非常に重要です。
X評点(経営規模)の算出構造
X評点とは?構成要素と重要性
X評点は、経営事項審査における「経営規模の評価点」です。これは以下2項目で構成されています。
- X1:完成工事高に基づく評価
- X2:自己資本額と利益額等に基づく評価
X評点は、最終的な総合評定値(P点)の一部として使われるため、Xだけで入札資格が決まるわけではありませんが、非常に大きなウェイトを占めます。
X1:年間平均完成工事高
X1では、過去2年または3年の完成工事高の平均値をもとに評価されます。完成工事高とは、工事の引き渡しが完了した案件の収益を指し、建設業会計独特の「完成基準」や「工事進行基準」に基づいて計上されます。
単に工事件数を増やすのではなく、高品質かつ利益の取れる工事を安定的に受注・完工する経営体制が重要です。
X2:自己資本額と利益額等
X2は、以下の2つの項目にそれぞれ点数がつき、その合計で構成されます。
- 自己資本額(貸借対照表の純資産)
- 利益額等(営業利益+減価償却費等)
特に「利益額等」は、いわゆるEBITDAではなく、国土交通省が定めた形式で計算される特殊な指標です。財務書類の整合性・透明性が求められるため、専門家によるサポートが有効です。
X評点アップのための3大戦略
①完成工事高(X1)の増加を目指す
完成工事高の増加はX1の向上に直結します。そのためには、営業力の強化だけでなく、技術力の向上や安定した品質管理体制の構築が不可欠です。無理な価格競争に陥らず、利益率も確保しながら受注数を増やす工夫が求められます。
②自己資本を増やす
自己資本額を増やすには、増資や利益の社内留保が有効です。内部留保は時間をかけた積み上げが必要ですが、安定した資金基盤の構築に繋がります。外部からの出資による増資は即効性がありますが、株主構成の変化なども伴うため慎重に判断すべきです。
③利益額等(営業利益+減価償却費等)の改善
利益額等を高めるためには、「売上を増やす」「コストを下げる」「経費を削減する」といった基本的な経営改善が必要です。経営者だけでなく、現場の職員全体で業務効率や原価管理への意識を高め、組織的に取り組むことがポイントです。
経審申請の実務ポイント
必要書類の確認
経審の申請には、以下のような多様な書類が必要となります。
- 登記事項証明書
- 建設業許可通知書
- 経営状況分析結果通知書
- 工事経歴書
- 財務諸表一式(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表)
- 技術職員名簿
- 納税証明書 など
特に財務諸表は、国土交通省の指定様式に則り正確に作成する必要があり、税理士や会計士の関与が推奨されます。
経営状況分析機関の選定
「経営状況分析」は、国土交通省が登録した民間機関(登録経営状況分析機関)に依頼します。手数料や処理スピード、サポート体制などを比較して、自社に合った機関を選びましょう。※経営事項審査自体は、許可行政庁が行います。
申請後の対応
申請後は、審査機関からの問い合わせや資料の追加提出が求められることがあります。これらには迅速かつ丁寧に対応しましょう。面談などがあるわけではありませんが、審査のスムーズな進行には、書類の正確性と対応の誠実さが鍵となります。
まとめ:経営戦略としてのX評点対策
X評点の向上は、経審のP点向上を通じて、より大規模な公共工事の受注に繋がる可能性があります。しかし、X1・X2いずれか一方に偏っていては十分な効果を得られません。バランスの取れた経営体質を構築することが最重要です。
経審制度を正しく理解し、計画的に体制を整えることで、競争力ある建設企業への成長が実現します。不安や疑問がある場合は、行政書士や税理士など、経験豊富な専門家に相談することをおすすめします。