造園工事業は、都市の緑化や公共空間の景観整備を担う、社会的にも重要な建設業の一種です。
本記事では、建設業法に基づく造園工事業の定義、許可取得に必要な資格・要件、工事の具体例、申請手続きや注意点まで、制度的に正確な情報をわかりやすく解説します。
造園工事業とは?定義と対象工事
造園工事業は、建設業法施行令第2条に基づき以下のように定義されています:
「樹木の植栽、地被植物の植栽、景石の配置、庭園用設備の設置、地形の造成その他の造園を目的とする工作物に関する工事」
つまり、単なる庭づくりにとどまらず、都市公園や緑地整備、学校や施設の緑化工事など、公共性の高い空間整備も含まれます。
許可が必要な工事・不要な工事
建設業法では、次のいずれかに該当する場合に建設業許可が必要です:
- 請負金額(税込)が500万円以上の工事(材料費・労務費含む)
- 建築一式工事で1,500万円以上(税込)または木造で延べ面積150㎡超
したがって、造園工事業においても、工事1件の金額が税込500万円以上となる場合には、建設業許可が必要です。
例)大規模な公園整備工事、街路樹の大量植栽など。
逆に、500万円未満の工事のみを請け負う事業者は、許可がなくても工事を行えますが、公共工事や大手ゼネコン案件への参加を見据える場合、早期の許可取得が推奨されます。
一般建設業許可と特定建設業許可の違い
造園工事業の許可には、以下の2種類があります。
区分 | 概要 |
---|---|
一般建設業許可 | 元請として施工する場合や、下請契約額が4,000万円未満(税込)の場合 |
特定建設業許可 | 元請として、1件あたり4,000万円以上(税込)の下請契約を発注する場合 |
特定建設業許可を取得するには、財産的要件や専任技術者の資格など、一般建設業よりも厳しい基準が設けられています。
許可取得に必要な3つの主要要件
1. 経営業務の管理責任者の設置
令和2年の法改正により、以下のいずれかの体制が必要です:
- 同一業種で5年以上の経営業務経験を有する常勤役員等
- 経営業務を6年以上補佐した者を含む体制で、社内規程整備などを行っている法人
証明には、法人の登記簿謄本、業務実績書、契約書控え等の提出が必要です。
2. 専任技術者の配置
造園工事業における専任技術者の要件は以下の通りです。
- 資格取得者:
- 1級造園施工管理技士
- 2級造園施工管理技士(造園工事業専任可)
- 技術士(建設部門[都市及び地方計画]または農業部門[造園]) - 実務経験者:
- 指定学科卒業+3年以上の実務経験
- 高卒+5年、または実務経験10年以上(無資格)
※専任技術者は営業所ごとに常勤で配置が必要です。代表者との兼任は条件付きで可能です。
3. 財産的要件
一般建設業許可の場合、以下のいずれかを満たす必要があります:
- 自己資本500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 許可申請直前5年間、許可を受けて不良実績がない
証明方法としては、直近の決算書や預金残高証明書、融資承認通知書等が使用されます。
欠格要件について
以下のいずれかに該当する場合、許可を受けることはできません:
- 禁錮以上の刑の執行から5年以内
- 建設業法違反による許可取消から5年以内
- 暴力団関係者等
- 虚偽申請等を行った者
申請時には、役員・支配人等についても全員の調査が行われます。
造園工事業の代表的な専門工事
植栽工事
樹木・草花の植え付けと維持管理。剪定、施肥、防虫処理なども含まれます。
地被工事
芝生やグランドカバー等の地面緑化。景観・土壌流出防止・ヒートアイランド対策にも効果あり。
景石工事
庭石・景石の配置により空間演出を行う工事。風景設計・構成力が求められます。
庭園設備工事
庭園灯・水栓・ウッドデッキ・パーゴラ等、庭の機能性・快適性を高める工事。
※一部設備(照明等)では、電気工事業との区分判断が必要な場合もあります。
許可申請の流れと注意点
🔹 提出書類の例
- 建設業許可申請書(様式第一号)
- 履歴事項全部証明書(法人)
- 財務諸表(直近2期分)
- 専任技術者の資格証明書・実務経歴証明書
- 経営業務管理責任者の確認資料
🔹 提出先と方法
- 【知事許可】:主たる営業所が1都道府県内 → 各都道府県庁
- 【大臣許可】:複数都道府県に営業所がある → 国土交通省地方整備局
※電子申請の可否は都道府県により異なるため、事前確認が必要です。
🔹 許可後の義務
- 有効期限は5年間 → 更新申請が必要
- 変更届の提出義務 → 会社名・所在地・役員・技術者等の変更
- 事業年度終了届出書の提出(俗に「決算変更届」)
まとめ|造園工事業の建設業許可取得で信頼と成長を得る
造園工事業の建設業許可は、法令遵守の証であり、取引先や発注者からの信頼を得るうえで極めて重要な制度です。
公共工事や大規模案件への参入、事業拡大を視野に入れるなら、早期に制度を理解し、確実な申請を進めましょう。
本記事を参考に、正確な準備を整え、許可取得にチャレンジしてみてください。