MENU

主任技術者と監理技術者の違い|建設業許可申請の実務に役立つ徹底解説【2025年最新版】

建設業許可の取得や更新を進める際に、必ず登場するのが主任技術者監理技術者です。

「名前は聞いたことがあるけど、何が違うの?」
「どんな資格が必要?専任とか兼務とかよくわからない…」

そんな疑問を持つ担当者や若手の行政書士の方に向けて、この記事では役割・配置義務・資格要件・兼務の可否を、2024年12月・2025年2月施行の最新改正を踏まえて整理します。

目次

この記事でわかること

主任技術者や監理技術者について、まず知っておきたい重要ポイントを簡潔にまとめました。ここを押さえてから本文を読むと理解がスムーズになります。

  • 主任技術者は原則すべての建設工事で配置が必要
    (※500万円未満の工事でも許可業者には義務あり)
  • 監理技術者は元請特定建設業者が下請合計5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)の場合に配置
  • 専任=常駐ではない。ICT活用や短時間離任も認められる
  • 2024/12施行の専任合理化で、最大2現場まで兼務可
  • 営業所専任技術者も、条件を満たせば現場専任を兼務可能

👉 このあと、それぞれの役割と配置基準を詳しく解説していきます。

1. 主任技術者と監理技術者の違い

まずは両者の立ち位置を整理してみましょう。主任技術者はすべての工事に必要な「現場の技術責任者」、監理技術者は大規模工事で配置される「統括管理者」です。

主任技術者

  • すべての建設工事に原則必須
    (※「軽微工事」のみ不要。許可業者が行う500万円未満工事も配置が必要)
  • 主な役割:施工計画の作成・確認、品質・工程・安全管理、作業員への指導監督
  • 資格要件:二級施工管理技士や所定の実務経験でも可(工種ごとに規定あり)

👉 主任技術者は「その工事現場に責任を持つ技術者」です。小規模工事であっても、許可業者であれば配置が必要となる点が誤解されやすいポイントです。実務では、工事現場ごとに主任技術者の名前を明示し、工事体制台帳や施工体制台帳に記載するのが基本となります。

監理技術者

  • 元請の特定建設業者が下請合計5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)の場合に配置義務
  • 工事全体の統括的施工管理を行う(施工計画の確認、下請調整、品質・安全管理)
  • 資格要件:一級施工管理技士や一級建築士など高度資格者のみ(資格者証+講習修了が必須)

👉 監理技術者は「工事全体を束ねる技術責任者」であり、複数の主任技術者を指導・監督する立場です。役割は現場ごとの主任よりも広く、品質・安全管理を全体最適の視点からチェックする点が特徴です。「承認権者」ではなく「統括管理者」という位置づけを押さえておきましょう。


実務イメージの違い

主任技術者は「現場の監督役」、監理技術者は「現場全体の校長先生」のような存在です。主任が日々の施工管理を行うのに対し、監理は複数の下請をまとめて工事全体の方向性を正しく導く役割を担います。

👉 両者を混同すると、許可申請や体制台帳の記載でミスにつながるため、まずは「主任=個別現場の責任者」「監理=大規模工事の統括者」と覚えておくと安心です。次に、この違いを前提に、配置義務の金額基準を確認していきましょう。

2. 配置義務の基準(金額要件)

配置義務は工事金額や発注形態によって変わります。2025年2月から金額基準が引き上げられるため、最新の数字を必ず確認しましょう。

主任技術者

  • 原則すべての工事で必要
  • 例外:型枠工事・鉄筋工事などの「特定専門工事」で厳格な要件を満たす場合のみ不要

監理技術者(2025/2/1 改正後)

  • 下請合計が 5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上) で必要
  • 専任が必要となる請負代金の下限も 4,500万円(建築一式は9,000万円) に引き上げ

👉 見積段階から「下請合計の見通し」と「専任要否の閾値(4,500万/9,000万)」を同時に確認するのが実務上の鉄則です。次に、専任と常駐の違いを整理しておきましょう。

3. 「専任」と「常駐」の違い

建設業法上よく出てくる「専任」と「常駐」。似たような言葉ですが、実は意味が大きく異なります。誤解しやすい部分なので、ここで整理しておきましょう。

  • 専任=その工事に専念する義務
  • 常駐=現場に居続ける義務

👉 専任とは「他の工事を掛け持ちせず、その工事だけを担当する」ことを意味します。対して常駐は「物理的に現場に張り付き続けること」。

よくある誤解

「専任=ずっと現場にいないといけない」と思われがちですが、これは間違いです。例えば、監理技術者が専任であっても、打合せや別業務で数時間現場を離れることは認められています。

実務でのイメージ

  • 専任 → 他の現場を兼務してはいけない(原則1工事専任)。
  • 常駐 → 事務所や仮設ハウスに常時いること。

専任を要する工事でも「常時現場に居続ける義務まではない」ため、短時間の離任やICTによる遠隔管理は可能です。国交省の運用通知でも、常駐義務を課していないことが明示されています。

👉 ポイントは「専任=掛け持ち禁止」「常駐=物理的常時滞在」であり、混同しないことです。次に、この「専任」の考え方を前提に、2024年12月の改正で導入された兼務のルールを確認していきましょう。

4. 兼務はできるのか?(2024/12/13改正)

これまで主任技術者や監理技術者は「専任=1現場だけ」が原則で、複数現場を担当することはできませんでした。しかし、人材不足が深刻化する中で、一定の条件を満たせば“最大2現場まで兼務可能とする制度改正が2024年12月13日に施行されました。

改正の背景

  • 建設業界では技術者不足が続き、「現場ごとに専任を配置する」ルールが実態に合わなくなっていました。
  • そこで、巡回やICTを活用することで、現実的に複数現場を管理できる仕組みが導入されました。

兼務が認められる条件(概要)

  • 移動時間:片道2時間以内で、1日で現場を巡回できること
  • 現場数:最大2現場まで
  • 下請次数:3次まで
  • 体制整備:各現場に連絡員を配置し、ICTを活用して管理状況を把握
  • 書類管理:人員配置計画書を作成・保存し、監査に備える

👉 つまり「同じ地域内で近い2つの現場を行き来できる」イメージです。ただし、条件を欠いた兼務は違反となり、行政処分や入札停止につながる恐れがあります。

次に、この改正と合わせて導入された「営業所専任技術者の特例」について見てみましょう。

営業所技術者の特例

  • 営業所専任技術者も、条件を満たせば現場専任を兼務可能に

👉 この特例により、営業所と現場の両方で人材を効率的に活用できるようになりました。次に、技術者の資格要件を整理します。

5. 資格要件まとめ

主任技術者と監理技術者は、どちらも「一定の知識と経験を持つ人材」であることが前提ですが、求められるレベルが異なります。ここを正しく理解することが、許可申請書類の添付資料を準備するときに非常に重要です。

主任技術者

  • 一級/二級施工管理技士
  • 所定の実務経験でも可(工種ごとに期間規定あり。例:高卒5年、大卒3年など)

👉 主任技術者は「二級資格や一定の実務経験」でもなることができます。つまり比較的幅広い人材が対象になりやすいのが特徴です。ただし、工種ごとに「経験年数」が細かく決まっており、証明書類(工事経歴や就業証明)が揃わないと認められません。

監理技術者

  • 一級施工管理技士/一級建築士など、高度資格者が原則
  • 監理技術者資格者証の交付+5年以内の講習修了が必須

👉 監理技術者は主任技術者よりも一段階上の資格が必要です。単に一級資格を持っているだけでは不十分で、資格者証の携帯と5年以内の講習修了が条件になります。許可申請の現場では「資格証はあるが講習が切れていた」というミスが意外と多いため要注意です。

6. 許可申請・実務での注意点

建設業許可の申請や現場管理では、ちょっとした認識違いが大きなトラブルにつながります。特に以下の点は、申請担当者や若手行政書士がつまずきやすい部分です。

  • 申請書の「専任技術者」と現場の「主任・監理技術者」は別物
    → 許可申請の段階では営業所ごとの専任技術者を証明しますが、これは現場に配置する主任・監理技術者とは役割が異なります。両者を混同すると書類不備の原因になります。
  • 雇用関係を証明する書類が必要になる場合がある
    → 社会保険証や雇用契約書の提出を求められることがあり、「名義貸し」を防ぐ観点から実態が重視されます。単に資格証を添付するだけでは不十分です。
  • 公共工事では「3か月以上の雇用関係」など追加要件がある
    → 入札参加資格審査では、雇用期間や社会保険加入状況が厳しくチェックされます。短期雇用や外注扱いでは条件を満たさない可能性があります。
  • 配置義務違反は重大な処分につながる
    → 指導・営業停止・入札停止など、企業経営に直結するリスクがあります。たとえ一現場でも軽視すると、信用の失墜につながります。

👉 これらを押さえることで、「申請段階ではOKだったのに実務で不備が発覚」という最悪の事態を防ぐことができます。次に、読者のよくある疑問に答えるQ&Aを確認してみましょう。

7. よくある質問(FAQ)

Q1:500万円未満の工事でも主任技術者は必要?

A:必要です。 不要なのは「許可不要の軽微工事」だけであり、許可業者が請ける工事には金額に関わらず主任技術者が必要です。

Q2:監理技術者は現場に常駐しないとダメ?

A:いいえ。 専任義務はありますが、常駐義務はありません。ICTや短時間離任が認められています。

Q3:主任技術者・監理技術者の兼務は可能?

A:はい。 2024年12月以降、要件を満たせば最大2現場まで兼務可能です。営業所技術者の現場兼務も条件付きで認められています。

Q4:監理技術者になるには?講習は必須?

A:必須です。 一級国家資格者等であることに加え、監理技術者資格者証の交付と5年以内の講習修了が求められます。

まとめ

主任技術者は、すべての工事で配置が必要となる現場責任者であり、施工計画や品質・工程の管理を担います。一方、監理技術者は大規模工事で配置される統括管理者として、下請の調整や工事全体の安全管理を行う重要な存在です。

2024年12月と2025年2月の法改正により、配置義務の金額基準が引き上げられるとともに、専任義務の合理化によって兼務制度が導入されました。今後は、許可申請の段階から「誰を・いつ・どこに配置するか」を明確にし、実務と書類の両面で整合性を取ることがますます重要になります。

もし配置義務や資格要件について不明な点があれば、行政書士等の専門家に相談することをおすすめします。 専門家は、建設業法に関する豊富な知識と経験を持っており、建設業者の疑問や課題を解決することができます。当サイトでも無料相談を受け付けていますので、ぜひお気軽にご活用ください。

疑問や不安は、専門家に直接聞くのが一番です。
まずは、お気軽にご相談ください。

監修者プロフィール

小林 正樹(こばやし まさき)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

目次