建設業許可を取得するために欠かせない「専任技術者証明書(様式第八号)」。この記事では、新規申請、業種追加、技術者変更など、ケース別の書き方から、記入時の注意点、添付書類の具体例まで、初心者の方でも迷わず書類作成ができる“虎の巻”としてお届けします。
専任技術者制度の基本を理解しよう
専任技術者証明書とは?建設業許可における役割と重要性
建設業許可を取得・維持するには、各営業所ごとに「専任技術者」を配置することが建設業法で義務付けられています。専任技術者は、技術的な管理の責任者として次のような役割を担います:
- 工事の適正な施工を技術的に管理・監督
- 関係法令を遵守しながら現場を指導
- 許可業種に対応する資格や実務経験を保有
この技術者の要件を満たしていることを、様式第八号で「自ら記載・証明」する必要があります。行政機関が発行する証明書ではありませんが、添付書類と併せて、その有資格性を審査機関に伝える重要な書類です。
証明書の必要な場面と種類
以下のケースでは、専任技術者証明書(様式第八号)および関連書類の提出が求められます:
- 新規許可申請:技術者の情報を初めて申請するため、すべての証明書類が必要
- 業種追加:追加する業種に対して新たに専任技術者を示す必要がある
- 専任技術者の変更:退任・就任に伴い、新たな技術者の証明書が必要
- 更新時:変更があった場合のみ提出が必要な場合あり(自治体による)
書類作成の実践ポイントと記入ガイド
専任技術者証明書(様式第八号)の入手と準備
- 各都道府県の建設業許可窓口、または国土交通省のホームページで様式第八号をダウンロード可能
- 書式はA4縦型で、原則手書き。黒のボールペンで記載。修正液・修正テープは使用不可
必要な添付書類(例):
- 技術士、建築士などの国家資格保有者:合格証書や免許証の写し
- 指定学科卒業+実務経験:卒業証明書、在職証明書(3年または5年)
- 実務経験のみ:原則10年以上、工事内容を明記した在職証明書
- 住民票(本籍記載不要)や会社の登記簿謄本なども必要となることあり
※ 必要書類は都道府県によって異なるため、必ず申請先に確認を。
書き方の詳細解説:申請区分から営業所情報まで
【1】申請区分と日付の記入
- 様式第八号の冒頭にある「申請区分」に○を付けます:
- 新規許可申請
- 更新申請
- 業種追加
- 専任技術者の変更
- 日付は申請書を提出する当日または直前の日付を記入
- 空欄や過去日付はNG。形式は「2025年8月3日」など西暦で
【2】技術者の氏名・生年月日・資格区分の記入
- 氏名は戸籍通りに。通称や略字の使用は避ける
- 生年月日は西暦で記載し、資格の年齢制限に影響する可能性があるため要確認
- 資格区分の書き方:
- 指定学科卒業 →「指定学科卒業」
- 国家資格保有者 →「一級建築士」など具体的に記入
- 実務経験者 →「実務経験」
【3】担当工事の種類と営業所の情報
- 工事種類は、許可を取得したい業種に対応させて記載(例:「土木工事」「建築工事」など)
- 複数業種を申請する場合は、すべて記載可
- 営業所名・所在地は、登記簿謄本に記載されている名称・住所を正確に転記
- 専任技術者は、その営業所に常勤していることが求められます(非常勤は不可)
ケース別:記入の実例と注意点
✅ 新規許可申請の場合
- 「申請区分」→「新規許可申請」に○
- 氏名・生年月日・資格区分を正確に記載
- 工事種類は申請業種に応じて(例:「建築工事」)
- 営業所名・所在地は登記簿に従って転記
- 添付書類例:資格証の写し、卒業証明書、実務経験証明書、住民票など
✅ 業種追加の場合
- 「申請区分」→「業種追加」に○
- 新たな業種に必要な資格・実務経験を記載
- 工事種類は追加業種に該当する名称で(例:「電気工事」)
- 添付書類も追加業種に関するものを添付
✅ 技術者変更の場合
- 「申請区分」→「専任技術者の変更」に○
- 新任の技術者の情報を正確に記載
- 工事種類は継続する業種に対応させて記載
- 営業所情報は変わらずとも再記載
- 添付書類例:新任技術者の資格証、実務証明書、住民票など
- 退任者の情報は、別途「退任届(様式)」を用いて提出
よくある疑問Q&A
Q. 証明書に有効期限はありますか?
A. 書類自体に期限はありませんが、技術者が退職したり、要件を満たさなくなった時点で無効となります。更新申請時に変更があれば再提出が必要です。
Q. 証明書を紛失したら?再発行できますか?
A. 提出済みの証明書は原則返却されません。再度、同じ内容の証明書を作成し、必要書類を添えて提出することになります。紛失時は所轄庁へ相談してください。
Q. 自分で作成できる?行政書士に依頼すべき?
A. 自作も可能ですが、初回申請や複雑な条件(学歴+経験など)の場合は行政書士に依頼するとスムーズです。費用はかかりますが、書類の整合性確保や手続きの迅速化が期待できます。
まとめ:専任技術者証明書を正しく作成し、建設業許可取得を確実に
建設業許可を申請するにあたり、専任技術者証明書は“技術力”を証明する最重要書類のひとつです。
まずは以下のポイントを押さえておきましょう:
- 技術者の資格・実務経験要件を確認
- 様式第八号を丁寧に記入(記入ミスや空欄はNG)
- 添付書類の内容と整合性があることを確認
- 自治体ごとのローカルルールも忘れず確認
正確な書類を用意することで、申請がスムーズに進むだけでなく、許可取得後のトラブルも防ぐことができます。自力で挑戦したい方も、行政書士などの専門家と連携したい方も、本記事を参考に確実な第一歩を踏み出してください。