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左官工事業の建設業許可を取得する方法:条件、費用、手続きを分かりやすく解説

左官工事業は、壁土やモルタル、漆喰、プラスターなどを使い、工作物の表面を塗り仕上げる専門性の高い工事です。美観だけでなく、耐久性や機能性にも関わる重要な工程であり、一定規模以上の工事を請け負うには「建設業許可」が必要です。この記事では、左官工事業の建設業許可が必要になる基準から、取得条件、申請手続き、費用、そして許可を取るメリットまでを、法律の最新情報に基づき、分かりやすくお伝えします。

目次

左官工事業とは何か、その範囲と許可が必要なケース

建設業法では、左官工事業を「工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスターなどを塗り付け、または吹き付ける工事」と定義しています。具体的には、モルタル塗り、漆喰仕上げ、土壁の築造、石膏プラスターによる仕上げ、吹付工事、とぎ出しや洗い出し工事などが含まれます。これらは内装や外装の仕上げ、下地づくり、防水性向上など、多様な役割を持っています。

建設業許可が必要かどうかの判断基準は「請負代金の額」です。左官工事のような専門工事では、税込金額に注文者支給材料の価額を含めて500万円以上となる工事を請け負う場合、建設業許可が必要になります。たとえ見積上は工事代金が500万円未満でも、注文者から支給された材料分を加えると500万円を超える場合は、許可が必要となるので注意してください。

この「500万円基準」は、建築一式工事に適用される1,500万円基準や150㎡未満の木造住宅基準とは異なり、左官工事業では常に500万円が目安となります。無許可で基準以上の工事を請け負った場合、建設業法違反となり、個人は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金が科される可能性があります。

許可の種類と区分:一般建設業と特定建設業

左官工事業の許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」があります。違いは、元請として工事を請け負ったときに、一次下請へ発注する金額の総額で判断されます。

1件の工事について、一次下請への発注総額が5,000万円以上(建築工事業の場合は8,000万円以上)になる場合は「特定建設業許可」が必要です。それ未満であれば「一般建設業許可」で足ります。特定建設業許可は、大規模工事を適切に管理し、下請を保護するため、資本金や自己資本、流動比率など、より厳格な財務基準や技術者要件が課されています。

将来、大規模工事を元請として手掛ける計画がある場合は、事前に特定建設業許可を取得しておくことも検討に値します。

許可の区分:大臣許可と知事許可

許可の権限は、営業所の所在地によって国土交通大臣と都道府県知事に分かれます。営業所が2つ以上の都道府県にある場合は大臣許可、1つの都道府県内のみに営業所がある場合は知事許可です。

ここでいう営業所とは、単なる登記上の本店や現場事務所ではなく、契約や見積など実質的な営業活動を行う拠点を指します。許可区分を誤って申請すると受理されないこともあるため、営業所の範囲を正確に把握しておきましょう。

左官工事業許可の取得要件

建設業許可を取るには、以下の要件を満たす必要があります。

経営業務の管理体制

2020年の法改正で、かつての「経営業務の管理責任者(経管)」必置制は廃止されました。現在は「経営業務を適正に管理できる体制」があれば足ります。これは、役員や使用人の経営経験、一定の研修修了、社内の業務分掌や規程整備など、複数の方法で証明できます。

専任技術者

左官工事業の専任技術者は、左官技能士(1級・2級)、建築施工管理技士(仕上げ区分1級・2級)など、国が定めた資格を持つ人、または10年以上の実務経験者が該当します。専任技術者は営業所ごとに常勤で配置し、他社と兼務はできません。

財産的基礎

一般建設業では、①自己資本額が500万円以上、②500万円以上の資金調達能力がある、③直前5年間継続して許可を受けていた、のいずれかを満たす必要があります。特定建設業では、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上、欠損額が資本金の20%未満、流動比率75%以上など、より厳格な条件があります。

誠実性

請負契約に関して不正や不誠実な行為をしていないことが必要です。自治体によっては誓約書の提出を求める場合もありますが、審査の本質は過去の違反歴や行政処分歴に基づきます。

欠格要件に該当しないこと

破産手続中の者、暴力団関係者、一定の刑罰を受けてから一定期間が経過していない者などは許可を受けられません。対象は法人の役員や令3条の使用人(支店長など)であり、一般従業員は含まれません。

申請手続きの流れ

まずは必要書類を準備します。建設業許可申請書のほか、経営業務管理体制を示す資料、専任技術者の資格や経験を証明する書類、財産的基礎を示す書類、役員や一定使用人の身分証明書や登記されていないことの証明書などが必要です。

提出先は営業所の所在地を管轄する都道府県庁または地方整備局です。提出方法は自治体により異なり、窓口予約制、郵送、電子申請などがあります。受付開始は許可満了日の3か月前からですが、更新の場合は満了日の30日前までに申請を済ませる必要があります。

申請後、通常1か月から1か月半程度の審査期間を経て、許可が下ります。許可を受けたら、営業所と工事現場に標識を掲示する義務があります。

許可を取るメリット

建設業許可を取得すると、公共工事や大規模民間工事への参入が可能になり、顧客や取引先からの信頼も高まります。金融機関からの融資が受けやすくなるほか、従業員のモチベーション向上にもつながります。法令を遵守した健全な経営体制を示すことは、長期的な事業の安定と発展に直結します。

まとめ|左官工事業の建設業許可を取得する方法

左官工事業で安定的に事業を成長させるためには、建設業許可の取得は避けて通れません。許可の要否基準や取得要件は、法律や運用の改正で変わることもあります。特に特定/一般の区分、500万円基準の計算方法、経営体制や専任技術者の資格要件は最新情報を確認することが大切です。

もし書類作成や要件確認に不安があれば、行政書士など専門家の力を借りることをおすすめします。正しい知識と準備で許可を取得し、左官工事業の可能性を大きく広げていきましょう。

監修者プロフィール

西條 朋美(にしじょう ともみ)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

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