電気通信工事業は、建設業許可のなかでも高度な専門性が求められる業種です。情報社会の基盤となる通信インフラの構築・整備を担うため、信頼性や技術力が重視されます。本記事では、電気通信工事業の建設業許可取得に必要な要件、該当する工事の種類、そして注意すべきポイントを法令に基づいてわかりやすく解説します。
電気通信工事業とは?
建設業法施行令第2条に定められた「電気通信工事業」とは、次のような工事を対象としています。
- 電気通信線路設備工事(例:光ファイバー・電話回線の敷設)
- 放送機械設備工事
- データ通信設備工事
など、構造物に電気通信設備を設置・改修する建設工事が該当します。
※情報処理機器の設置やプログラミング作業のみの業務(例:サーバー設置、PC設定等)は、建設業許可の対象外となる場合があります。
建設業許可が必要なケースと不要なケース
許可が必要な工事
建設業許可が必要となるのは、次のいずれかに該当する場合です:
- 工事1件あたりの請負金額が税込500万円以上の建設工事
- 元請として特定建設業許可が必要な下請契約(下請が4,000万円以上の場合など)
許可が不要な「軽微な工事」
請負金額が500万円未満(税込・材料費込み)の場合は、原則として建設業許可は不要です。例としては:
- 小規模オフィスのLAN配線
- 家庭用のインターネット回線の宅内工事
ただし、電気工事士資格が必要となる工事が含まれる場合は、別途法令に従って資格保有者が施工する必要があります。
電気通信工事業許可を取得するための要件
① 経営業務の管理責任者(令和2年10月施行の改正後要件)
次のいずれかを満たす必要があります:
- 許可を受けようとする業種について5年以上の経営業務経験を有する常勤役員等
- 補佐経験がある役員等で、一定の要件を満たす者
- 適切な経営管理体制が整っている法人で、役員に準ずる立場の者を配置
※電気通信工事業に限定せず、他の業種経験でも認められるケースあり。
② 専任技術者
次のいずれかの条件を満たす必要があります:
- 指定学科(例:電気通信工学等)卒業+3年以上の実務経験
- 実務経験8年以上(高卒・中卒等含む)
- 第一級陸上無線技術士、第一級電気通信主任技術者 等の国家資格所持者
※電気工事士は原則として電気通信工事業の専任技術者資格とはなりません。
③ 財産的基礎(一般建設業の場合)
次のいずれかを満たす必要があります:
- 自己資本額が500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力があることを証明
- 直前5年間に建設業許可業者として不良実績がない
申請から取得までの流れと注意点
申請書類
主な提出書類は以下のとおりです:
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 財務諸表(直前2期分)
- 経営業務の管理責任者・専任技術者の証明書類
- 工事経歴書や使用人数調書など
不備や要件不足があると、補正や不許可となる場合があるため、専門家への相談が有効です。
審査期間と更新
- 審査期間の目安:1~3ヶ月
- 許可の有効期間:5年間(満了前に更新が必要)
※更新では一部簡略化された書類で済む場合がありますが、要件を満たしているかどうかの再審査があります。
許可取得後の維持管理
許可取得後も、以下に該当する場合は変更届出が必要です:
- 経営業務管理責任者や専任技術者の変更
- 代表者・役員の変更
- 商号・所在地の変更
また、建設業法改正などにも注意を払い、定期的な自己点検と体制整備を行いましょう。
電気通信工事業の主な工事例
電気通信線路設備工事
- 光ファイバー・電話回線の敷設
- 通信線の架設・配管工事
放送・情報制御設備工事
- 防犯監視カメラシステムの設置
- 公共施設等の放送・館内通信設備工事
- 工場内の制御系ネットワーク構築
情報処理設備工事(建設業対象となる場合)
- サーバーラック等の構造物への設置工事
- 配線やアンカー固定を伴うハードウェア設置
※ソフト設定や軽微設置作業のみの場合は対象外となることもあります。
まとめ:電気通信工事業許可は信頼と成長の基盤
電気通信工事業の建設業許可は、企業としての信頼性を高め、より大規模で収益性の高い案件への参入を可能にする大きなステップです。
特に公共工事や大手企業との取引を目指す場合には、早期の取得が将来の展望を広げる鍵となります。要件や申請手続きが複雑な場合は、行政書士などの専門家に相談し、確実な許可取得を目指しましょう。