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建設業許可と社会保険義務化|2025年以降の対策完全ガイド

2020年の建設業法改正により、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」への適切な加入が許可要件として義務化されました。この要件は建設業許可の新規取得だけでなく、更新にも適用されます。本記事では、許可の更新・変更手続き、社会保険加入義務、さらに「2024年問題」への具体的な対応まで、実務担当者が押さえておくべきポイントを網羅的に解説します。

目次

建設業許可の更新と変更手続き

許可更新は「30日前完了」が鉄則

建設業許可は、原則として5年ごとに更新が必要です。許可が失効すれば無許可営業となり、建設業法違反として罰則や業務停止処分のリスクがあります。

ポイントは「有効期限の30日前までに処理が完了していること」。
つまり、申請書類の提出はさらに前倒しで行う必要があり、余裕を持って1〜2ヶ月前には準備を始めるべきです。

更新には以下のような書類が必要となります:

  • 許可申請書類一式(変更届を含む最新内容に基づく)
  • 直前事業年度の財務諸表・納税証明書
  • 定款・登記事項証明書(法人の場合)

【コメント】更新準備を怠ると、最悪の場合“新規取得”が必要になります。顧客との契約に重大な支障をきたす恐れもあるため、スケジュール管理は極めて重要です。

決算変更届(事業年度終了報告書)の義務

すべての建設業許可業者は、事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届を提出する義務があります。これは「建設業法第11条」に基づくもので、法人・個人・大臣・知事問わず一律です。

もし未提出があると、更新審査で不利になるだけでなく、改善指導や行政処分の対象となることも。
過年度分の遡及提出も可能な場合があるので、未対応が判明した場合は速やかに所轄庁へ相談しましょう。

重要事項の変更届は30日以内

以下のような重要事項に変更があった場合、原則として30日以内に変更届の提出が必要です。

  • 商号・本店所在地
  • 役員構成(氏名・住所・生年月日等)
  • 経営業務管理責任者または専任技術者の変更
  • 営業所の増減

変更届を怠ると、許可取消や入札資格停止といった重い処分が科されることもあるため、変更後速やかに対応しましょう。

社会保険加入義務と許可への影響

建設業と社会保険適用の原則

2025年現在、建設業許可の更新や新規取得時に社会保険加入の有無が審査対象となるケースが明確化されてきました。

  • 法人の場合:原則として1名の従業員がいても健康保険・厚生年金保険に強制適用
  • 個人事業主の場合:建設業などの特定業種では、常時5人以上の従業員がいると強制適用

また、雇用保険・労災保険も、労働者を1人でも雇用している場合には加入義務が生じます。

社会保険未加入のリスク

社会保険未加入の場合、以下のようなリスクが発生します:

  • 建設業許可更新時に「未加入」として指導・是正対象となる
  • 是正されない場合、許可更新が拒否される可能性あり
  • 健康保険法・厚生年金保険法違反として刑事罰(罰金または懲役)
  • 未加入期間の保険料を遡及徴収
  • 労災事故時に全額自己負担
  • 金融機関・取引先からの信用失墜

【コメント】社会保険未加入は、リスクというより“即赤信号”。知らずに放置すると、取り返しのつかない事態になり得ます。

加入促進の支援策

国や自治体は、中小建設業者に対して以下のような支援を行っています:

  • 雇用保険・社会保険加入促進に関する【助成金】
  • 社会保険労務士による無料相談(一部地域)
  • 加入促進窓口(年金事務所や労働局)での書類支援
  • オンライン手続きによる簡素化支援

残念ながら「社会保険料そのものの減免」は存在しませんが、負担軽減の仕組みは整いつつあります。詳しくは厚生労働省や所轄の年金事務所HPを確認しましょう。

2024年問題が建設業界にもたらす影響|働き方改革と対応戦略

時間外労働の上限規制の導入

「2024年問題(建設業における2024年問題)」とは、2024年4月1日から建設業にも適用された「時間外労働の上限規制」により、業界全体が直面する深刻な課題の総称です。

  • 原則:月45時間・年360時間以内
  • 特別条項付き協定:年720時間、複数月平均80時間以内、単月100時間未満

違反すると罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)も。
企業は「工期の見直し」「人員配置の最適化」「業務効率化」などを通じて、対応を迫られています。

建設業における影響

2024年問題は建設業界に対して様々な影響を及ぼしています。

長時間労働の是正
 → 天候・工程・職人の不足で残業が常態化していた現場への強烈なインパクト

工期の見直しが必須
 → 元請・発注者との調整が不可欠に

職人・技能者の確保が困難化
 → 働き方改革に対応できないと離職・人手不足が深刻化

コストアップ
 → 時間制限を補うための人員増・IT導入による負担増加

👉「2024年問題」が意味する本質的な課題、それは単なる“労働時間規制”ではなく、「旧態依然とした建設業の働き方そのものを変えることを迫る制度的圧力」を意味するのです。

週休2日制と生産性向上の鍵

国交省は公共工事における週休2日モデル工事の拡充を進めています。民間工事にも波及する形で、週休2日制導入の流れは不可避です。

これに対応するには、以下のような施策が求められます:

  • ICT建機の導入による工事効率化
  • 建設キャリアアップシステムによる技能者評価と人材配置最適化
  • 現場管理のデジタル化
  • 発注者への「適切な工期設定」の要請

✅まとめ:変化をチャンスに、2025年を乗り越える経営判断を

2025年は建設業にとって「対応しなければ淘汰される」転換期です。
建設業許可の適切な管理、社会保険の確実な加入、働き方改革への対応、そして長期的な人材確保戦略まで、一貫した取り組みが求められます。

変化を「負担」として受け止めるのではなく、「業務体制見直しと信用力向上のチャンス」と捉え、早期にアクションを起こしましょう。

監修者プロフィール

西條 朋美(にしじょう ともみ)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

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