建設業許可は、建設業を営む上で重要な資格です。許可を取得することで、事業の信頼性を高め、より大規模な工事に携わることが可能になります。しかし、建設業許可の取得には、満たすべき条件がいくつか存在します。この記事では、建設業許可を取得するために必要な条件を詳しく解説し、申請の際のポイントをまとめました。
建設業許可とは?信頼と事業拡大を支える「公的な証明」
建設業を営むうえで避けて通れないのが「建設業許可」です。許可を取得することで、法令遵守はもちろんのこと、顧客や取引先、金融機関に対しても「信頼できる業者」であることの証明になります。
法律上は、以下のような一定規模以上の工事を請け負う際に、建設業許可が必要です。
- 建築一式工事:請負金額1,500万円以上、または延床150㎡超の木造住宅
- それ以外の工事:請負金額500万円以上
許可を持つことで、公共工事への入札参加が可能となるほか、信用力が増し、金融機関の融資審査でも有利に働く場合があります。つまり、建設業許可は「企業の信頼性を示すパスポート」ともいえる存在です。
建設業許可を取得するための6つの条件とは?
経営業務管理体制の整備
2020年の制度改正で、「経営業務の管理責任者(経管)」制度は廃止され、「経営業務管理体制の整備」が要件として導入されました。
許可を申請するには、常勤の役員等に建設業に関する経営経験が5年以上ある者が1名以上必要です。
この体制が整っていないと、いかに技術力があっても許可は取得できません。
専任技術者の配置
各営業所には、該当業種に応じた「専任技術者」の配置が義務付けられています。
例えば、次のような資格・経験が要件として認められます:
- 一級建築士、二級建築士
- 1級・2級施工管理技士
- 資格がない場合でも、10年以上の実務経験で代替可(種類による)
専任技術者は、営業所に常勤している必要があり、他の業務との兼務は原則として不可です。
財産的基礎の確認
建設業は資金の出入りが大きく、施工の途中で資金ショートがあっては大問題です。そのため、一定の財務基盤が求められます。
- 一般建設業:自己資本500万円以上、または同等の資金調達力/営業実績
- 特定建設業:自己資本2,000万円以上、流動比率80%以上、資本金4,000万円以上
申請時の決算書や金融機関の残高証明等で確認されます。
欠格要件に該当しないこと
過去に建設業法違反で処分を受けていたり、破産者で復権していない場合などは、申請できません。
役員・支配人・令第3条使用人も含めて、すべての関係者が審査対象です。
営業所の設置
許可を受けるには、営業所が必要です。単なる作業場や連絡所ではなく、常時使用できる事務所であることが求められます。
実態確認のため、賃貸契約書・看板・固定電話番号などの提出が必要です。
誠実性
過去の行政処分や重大な法令違反がある場合は、許可の審査で不利になります。コンプライアンスを重視した経営体制が望まれます。
建設業許可の29業種と分類の考え方
建設業許可は、工事の内容によって29業種に分かれており、主に以下のように分類されます:
【総合工事業】2業種
・土木一式工事
・建築一式工事
【専門工事業】27業種
大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事
複数業種を営む場合は、それぞれの業種について許可が必要です。
ただし「軽微な工事(建築一式工事:1,500万円未満かつ150㎡未満/その他工事:500万円未満)」は、許可なしでも施工可能とされています。
許可申請から取得までの流れと注意点
申請先と審査期間
- 都道府県知事許可:営業所が1都道府県内の場合
- 国土交通大臣許可:複数の都道府県に営業所がある場合
審査期間は1〜3ヶ月程度が一般的ですが、書類の不備があるとさらに遅延します。
各都道府県で「事前相談」を行うことが推奨されます。
申請に必要な書類
- 許可申請書
- 経営業務経験の証明資料(役員の履歴・契約書など)
- 専任技術者の資格証や実務経験証明書
- 財務諸表(決算書)または残高証明書
- 納税証明書(場合による)
- 営業所の所在地を確認できる書類
許可取得後の維持管理:更新と変更届
更新手続き
建設業許可の有効期間は5年間です。
有効期限の3ヶ月前から更新申請が可能です。更新時にも、経営体制・財務状況・技術者体制が審査されます。
変更があった場合の対応
以下のような変更があった場合は、30日以内に変更届を提出する必要があります:
- 商号変更
- 所在地移転
- 役員変更
- 技術者変更
届出を怠ると、最悪の場合「許可取消」につながる可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q:個人事業主でも建設業許可を取得できますか?
A:可能です。法人と同様にすべての許可要件を満たす必要があります。
特に経営業務管理体制の経験者が自分自身となるケースが多いため、確定申告書などでの経験証明が鍵となります。
Q:許可取得にどれくらい費用がかかりますか?
A:申請手数料(都道府県知事:90,000円)、登録免許税(大臣許可は150,000円)に加え、行政書士等に依頼する場合は10万〜30万円が相場です。
Q:許可が不要な軽微工事とは?
A:「建築一式工事」で1,500万円未満かつ延床150㎡未満の木造住宅、「その他工事」で500万円未満の工事については許可不要です。
ただし、公共工事では軽微であっても許可が必要な場合があるため、注意が必要です。
まとめ:許可は信頼と成長の鍵
建設業許可の取得は、単なる手続きではなく、事業の信頼性を高めるための重要なステップです。
そして許可を取得することで、より大規模な案件にチャレンジできるようになり、長期的な企業成長の足掛かりにもなります。
もし申請手続きに不安がある場合は、行政書士などの専門家のサポートを受けることも視野に入れましょう。
法改正や最新の要件に対応した申請サポートを受けることで、スムーズかつ確実な許可取得が期待できます。