建設業許可を受けている事業者にとって、専任技術者の変更は非常に重要な手続きです。特に14日以内の届け出が義務付けられており、これを怠ると、罰則や許可更新への支障が生じるおそれがあります。本記事では、変更届のルールや必要書類、注意点を実務の視点から分かりやすく解説します。
専任技術者変更時の基本ルール
変更届提出の義務と根拠法令
専任技術者が変更になった場合、建設業法第11条第2項および施行規則第5条に基づき、14日以内に変更届を提出する必要があります。提出を怠ると、建設業法第52条により10万円以下の過料の対象となる場合があります。
対象となる変更とは?
対象となるのは、以下のようなケースです。
- 専任技術者の退職・死亡・転勤
- 新たな技術者の就任
- 専任技術者の資格に関する重大な変更(別人への交代など)
同一人物が保有資格を追加・変更しただけ(例:二級から一級への昇格など)の場合は、変更届が不要なこともあります。ただし、業種追加や経審に影響する可能性があるため、事前に行政庁へ確認しましょう。
変更届の提出先と提出期限
提出先の確認方法
変更届は、建設業許可を受けた都道府県知事または国土交通大臣の許可行政庁に提出します。
- 東京都知事許可 → 東京都庁
- 国土交通大臣許可 → 地方整備局(例:関東地方整備局)
電子申請も一部自治体では可能ですが、対応状況は地域ごとに異なります。電子申請が可能かどうかは必ず各行政庁のWebサイトで確認してください。
提出期限とカウント方法
提出期限は、変更があった日から14日以内です。「変更があった日」とは、退職や異動によって専任技術者としての地位を失った日を指します。期限を過ぎると行政指導や過料の対象となるため、速やかな準備が重要です。
具体的な変更事例と実務対応
退職による変更
退職により専任技術者が不在になる場合、
- 不在となった旨の変更届を提出
- 後任者決定後、改めて変更届を提出
という二段階対応が必要です。専任技術者の不在は原則認められないため、早急な選任が求められます。別の従業員が要件を満たす場合は、その者を一時的に専任技術者に登録することも可能です。
役員変更に伴う専任技術者変更
専任技術者が役員を兼ねていた場合、その役員が退任すると同時に専任技術者の変更が必要になることがあります。この場合、役員変更に関する議事録(株主総会や取締役会の記録)も添付書類として提出することになります。
資格・経験による技術者変更
新たに選任する技術者が実務経験により要件を満たす場合には、卒業証明書、在職証明書、工事経歴書、健康保険等の加入実績などが必要となります。
変更届に必要な書類と注意点
変更届出書(様式第二十二号の二)
許可行政庁の公式サイトからダウンロードします。記載内容に誤りがないよう、氏名・生年月日・資格・実務経験などを正確に入力しましょう。
資格を証明する書類
- 資格証の写し(原本照合が必要な場合もあり)
- 実務経験者の場合は、過去の在籍企業が発行する実務経験証明書
- 必要に応じて健康保険・雇用保険の加入証明書類(写し)
外国の資格証明を提出する場合は、日本語訳を添付し、翻訳者の署名と連絡先を明記します。
その他の添付書類
- 後任者が役員となる場合は、議事録の写し
- 書類は3か月以内に発行されたものを使用
- 書類のコピーは必ず保管しておく
申請をスムーズに進めるためのチェックポイント
専任技術者の不在期間を作らない工夫
事前に後任者候補をリストアップしておくことで、不測の事態にも迅速に対応できます。日常的に複数の従業員が要件を満たすように教育しておくことも有効です。
正確な記載と確認
数字や資格名称に誤りがあると審査が差し戻される恐れがあります。提出前に第三者のチェックを受けることを推奨します。
まとめ:正確・迅速な対応が建設業許可維持のカギ
専任技術者の変更は、建設業法に基づき厳格に管理されており、遅延や不備は過料・許可更新不可・入札資格の喪失など重大な影響を及ぼす可能性があります。
必ず14日以内に対応し、必要書類を正確に整えて提出しましょう。
不安な場合は、行政書士など専門家のアドバイスを受けることで、確実かつ効率的な申請が可能となります。常に最新の制度動向にも注意を払いながら、コンプライアンスを意識した経営を心がけてください。