「そろそろ建設業許可を取りたいが、何から始めればいいかわからない…」
そんなお悩みをお持ちの方に向けて、本マニュアルでは、建設業許可を取得するためのステップを、制度的に正確かつ実務に即した形で、分かりやすくまとめました。
この記事を読めば、要件確認から書類準備、申請、許可取得後の管理まで、一連の流れがしっかりと理解でき、最短ルートでの許可取得に向けた行動を起こせます。
建設業許可の基礎知識
建設業許可とは?なぜ取得が必要なのか
建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を請け負うために必要な法的認可であり、「建設業法」に基づいて発行されます。許可取得には、会社の経営体制や技術者の配置、財務内容などが審査されるため、社会的な信頼性が伴います。
許可が必要な工事とは?
- 500万円(消費税込)以上の工事(建築一式工事は1,500万円以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅)
- 上記のような規模の工事を請け負う場合は、必ず許可が必要です。
許可の種類:一般建設業と特定建設業
建設業許可は、下請契約の金額によって2つに分かれます。
一般建設業許可
元請として、1件の工事で下請に出す金額が4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満)の場合に必要。
特定建設業許可
元請として、1件の工事で4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の下請契約を行う場合に必要。
🔍どちらを取得すべきかは、今後の契約規模を踏まえて慎重に判断しましょう。
許可取得のメリットと注意点
✔️ 主なメリット
- 公共工事への入札が可能に
- 元請業者として大規模案件への参入が可能に
- 顧客や取引先からの信用力がアップ
⚠️ 注意すべきデメリット
- 要件を満たすための人的・財務的負担
- 申請や更新にかかる手間とコスト
- 定期的な変更届・更新届の提出が必要
🌟 許可取得はコストではなく、長期的な投資と捉えるのがポイントです。
【ステップ1】許可要件の確認
経営業務管理体制の確保
令和2年の建設業法改正により、「経営業務の管理責任者」の個人資格要件は緩和され、法人として経営業務管理体制を整えているかが重視されます。
求められる体制の一例:
- 建設業の経営経験者が役員として在籍している
- 上記経験者を補佐する役職者・組織体制が整備されている
- 社内に経営判断や業務管理に必要な規程やフローがある
✅ 経験の浅い法人であっても、補佐体制や適切な運用記録で補完可能です。
専任技術者の配置
専任技術者とは、建設工事の技術面を管理する責任者のこと。許可を受けたい工事業種ごとに、次のような要件が求められます。
要件の一例:
- 指定資格(例:一級施工管理技士、建築士など)保有者
- 実務経験(例:10年以上の実務、または一定資格+実務3~5年)
🛠 建設業の質を支える重要なポジションです。不足している場合は、外部からの採用や社員の資格取得支援を検討しましょう。
財産的基礎の確認
建設業者としての経済的な信頼性も審査されます。
主な基準:
- 自己資本額:500万円以上(新規の場合)
- 流動比率が一定以上であること
- 債務超過でないこと(ただし補完資料で緩和される場合あり)
📈 赤字決算でも、他の基準を満たせば許可される可能性があります。専門家に相談することをおすすめします。
【ステップ2】申請書類の準備と作成
準備すべき主な書類一覧
申請には多くの添付書類が必要です。以下のような書類を揃えましょう。
- 建設業許可申請書(様式第一号)
- 経営業務管理体制の証明書類
- 専任技術者の証明書類(資格証・実務証明)
- 財務諸表、納税証明書、登記簿謄本、住民票、身分証明書など
- 定款・株主名簿(法人の場合)
📄 書類の記入ミスや証明不備は、補正指示や却下の原因となります。リスト化して漏れを防ぎましょう。
書類作成のポイント
- 記載内容は正確かつ最新情報に基づいて記載
- 役員構成・所在地変更などがあれば、反映を忘れずに
- インデックス・クリアファイルで見やすく整理
🗂「審査官が見やすい書類」は、結果的にスムーズな許可取得につながります。
電子申請の可否について
2025年現在、建設業許可の新規申請は原則として紙による提出が必要です。ただし、変更届など一部の手続きについては、自治体によっては電子申請が可能な場合もあります。
🔍 自治体の公式サイトで電子申請の対応範囲を事前確認しましょう。
【ステップ3】申請と審査の流れ
申請窓口と受付時間
申請先は以下の通りです:
許可の種類 | 申請先 |
---|---|
知事許可(1都道府県内) | 都道府県庁の建設業担当課 |
大臣許可(複数都道府県に営業所) | 国土交通省地方整備局 |
⏰ 受付時間は通常、平日9:00~17:00。事前予約が必要な自治体もあるため、必ず確認しておきましょう。
審査期間と内容
- 審査期間:通常は30日〜60日程度(自治体によって異なる)
- 審査内容:
- 経営業務管理体制
- 専任技術者の有無
- 財産的要件の充足
- 提出書類の整合性
📌 書類に不備があると、補正指示→再提出→再審査となり、時間を要します。
補正指示への対応
- 審査中に不備や不足が見つかった場合、補正指示が出されます。
- 期限内に正しく補正対応することで、許可取得につなげられます。
- 補正に対応しないと申請却下の可能性もあるため、速やかに対応を。
🔁 補正対応は、正確・迅速・丁寧が基本です。
【ステップ4】許可取得後の管理
許可の有効期限と更新
- 有効期間:5年間
- 更新申請は、有効期限の3か月前から受付開始
- 更新忘れで失効した場合、再度新規申請が必要に
📅 カレンダー管理やリマインダー設定で、更新忘れを防ぎましょう。
変更届の提出
次のような場合は、30日以内に変更届が必要です:
- 商号・代表者の変更
- 営業所の移転
- 資本金・役員の変更
🚨 届出漏れは建設業法違反のリスクとなります。体制変更時には即確認を。
建設業許可票の掲示義務
許可取得後は、以下の場所に「建設業許可票」を掲示する義務があります。
- 営業所(受付や入り口付近など)
- 一定規模以上の工事現場(500万円以上、建築一式は1,500万円以上)
📌 掲示を怠ると行政指導の対象となる場合があるため、必ず対応を。
まとめ:建設業許可は事業発展への第一歩
建設業許可は、単なる「許可証」ではなく、信用力・事業機会・経営体制の強化につながる経営資産です。
✔ 要件確認を怠らず
✔ 書類は正確かつ丁寧に
✔ 必要があれば専門家の力も借りて
――最短ルートで、確実な許可取得を目指しましょう。
【補足】申請支援の専門家(行政書士など)を活用することで、書類作成や補正対応の負担を軽減し、スムーズな取得につなげることができます。