建設業許可を受けている事業者が、営業所の責任者である「支配人」(多くの場合は建設業法施行令第3条の「使用人」)を変更する際には、建設業法に基づく変更届の提出が必要です。本記事では、制度の正確な理解に基づき、変更届の必要性、提出書類、手続き上の注意点、そして許可維持のための実務ポイントを解説します。
支配人変更に伴う変更届提出の法的根拠と位置づけ
変更届提出の法的根拠とは
建設業法施行規則第3条により、許可業者が営業所の「使用人」(いわゆる支配人)を変更した場合、その日から30日以内に変更届を提出する義務があります。これは、行政に対して正確な体制を報告し、許可内容を適切に維持するための重要な義務です。
未提出の場合は行政指導や過料の対象となる可能性があり、建設業許可の更新審査にも悪影響を及ぼすことがあります。形式的な届け出と捉えず、会社の信頼性を守る法令遵守の一環と考えましょう。
支配人と経営業務管理体制の関係
令和2年改正後の制度に基づく注意点
2020年10月の法改正により、従来の「経営業務の管理責任者」制度は廃止され、「経営業務を適切に管理する体制を有すること」が求められるようになりました。そのため、支配人が経営業務の補佐や中心的な管理者となっていた場合、体制に変更が生じたことを証明する書類(略歴書や組織体制図等)を変更届に添付する必要が生じる場合があります。
体制変更を証明できないまま届け出を怠ると、更新手続きに支障が出る恐れがあるため、慎重な確認と書類準備が必要です。
変更届の書類準備と提出の流れ
使用する様式と入手方法
変更届出書は、許可を受けた都道府県の建設業許可担当窓口で配布されているほか、国土交通省または各都道府県の公式ウェブサイトから最新版の様式をダウンロード可能です。様式は法改正により随時更新されるため、必ず最新版を使用してください。
添付書類の注意点
一般的に以下のような書類が求められます:
- 新旧支配人の略歴書
- 就任・退任に関する証明書(例:辞令、承諾書 等)
- 変更内容が分かる登記事項証明書(必要に応じて)
都道府県ごとに必要書類が異なる場合もあるため、事前確認を怠らないことが重要です。
提出方法と提出期限
提出先と方法の選択肢
提出先は、許可を受けた都道府県の建設業許可窓口です。提出方法は以下のいずれかが主流です:
- 窓口への直接持参
- 郵送(配達記録が残る方法が推奨)
- 一部自治体でのオンライン申請(対応状況は自治体により異なる)
オンライン申請は国土交通大臣許可の場合に限られることが多く、都道府県許可では未対応の自治体も多いため、事前に要確認です。
期限は「変更日から30日以内」
変更届は、支配人の変更があった日から30日以内に提出する必要があります。準備に時間がかかるケースもあるため、早めに対応しましょう。期限を過ぎると、過料対象や将来の許可更新審査に不利となる可能性があります。
変更に関連するその他の実務手続き
社会保険・雇用保険の確認
支配人が役員であり、かつ保険上の被保険者である場合には、以下の手続きも検討が必要です:
- 被保険者資格喪失届(退任時)
- 被保険者資格取得届(新任時)
単に営業所責任者(支配人)の交代であっても、社会保険手続きが不要な場合もあるため、状況に応じた個別確認が必要です。
税務署への届け出
支配人の変更が法人の代表者変更を伴う場合には、「異動届出書」の提出が必要です。ただし、支配人の交代のみでは通常、税務署への届出は不要です。
提出後の対応と内部管理のポイント
控えの保管と社内共有
提出後は、受付印が押された控えを必ず保管しておきましょう。これは許可更新時や行政からの問い合わせ時に必要な証拠資料となります。
また、社内で変更内容を共有することで、今後の社外対応や営業活動においてのミスを防げます。
まとめ:支配人変更届は実務と信頼の土台
支配人の変更は、単なる人事異動ではなく、建設業者としての適切な体制を外部に証明する重要な手続きです。必要な準備を早めに行い、書類の整備や確認を怠らず、提出期限内に適正に届け出ることが、許可の維持と信頼性の確保につながります。
少しでも不安がある場合は、建設業許可に精通した行政書士や専門家に相談することをおすすめします。専門家による確認は、リスクを防ぎ、長期的に安定した事業運営を支える大きな力となるでしょう。