建設業許可を取得・維持する上で、見落とせない重要ポイントのひとつが「常勤性」です。この記事では、常勤性がなぜ重要なのか、どのような立場に求められ、どんな書類で証明するのかまで、制度の趣旨に即して丁寧に解説します。
実務での注意点も含め、はじめて許可申請する方にも理解しやすいよう構成しています。
常勤性とは何か?制度の基本と意義
常勤性の定義と目的
「常勤性」とは、建設業の適正な運営を担う人物(経営業務の管理責任者、専任技術者等)が、実際にその事業所に日常的・継続的に勤務している状態を指します。
単なる名義貸しや週数日の勤務では認められず、出勤状況・勤務時間・給与支払・社会保険の加入実態など、客観的事実によって判断されます。
建設業法では、建設工事の品質確保と業界全体の健全性を守る観点から、主要な責任者に常勤性を求めています。特に、以下のようなリスクを防ぐために制度化されています。
- 名義貸しによる不適正な経営
- 品質管理・安全管理の空洞化
- 不法就労や契約不履行の助長
常勤性が求められる立場と証明書類
常勤性が求められる人物
建設業許可において、常勤性が明確に求められるのは以下の立場です。
- 経営業務の管理責任者
建設業者の経営を統括する責任者で、法人の役員や個人事業主自身が該当します。 - 専任技術者
一定の資格や実務経験を有する技術者で、各営業所に1名が必要とされます。
※「令3条使用人」についても常駐性が求められる場合がありますが、これは各都道府県の運用により扱いが異なるため、事前の確認が重要です。
常勤性を証明する代表的書類
法人の役員・従業員の場合
- 健康保険被保険者証(事業所名・資格取得日記載)
- 出勤簿、賃金台帳、雇用契約書の写し
- 住民税特別徴収税額通知書(勤務先が特別徴収義務者であることの確認)
個人事業主の場合
- 国民健康保険被保険者証(補足資料として)
- 所得税確定申告書(控用)+青色申告決算書
- 事業税納税証明書(直近分)
※特に、事業の継続性や申請者本人が実際に経営している実態を示すことが求められます。
就任・雇用直後の場合
- 雇用契約書の写し(勤務時間・賃金記載)
- 賃金台帳(支払済の証明)
- 被保険者資格取得届出書の控え(健康保険未交付時)
出向者の場合
- 出向証明書(出向期間・出向先明記)
- 出向辞令の写し
- 出向先での出勤簿や業務日報
出向元との雇用関係を維持しつつも、出向先で実態として指揮命令を受けて日常勤務していることがポイントです。
常勤性が認められない・認められにくい例
形式上の「非常勤役員」
名称が「非常勤」であっても、実態として常時勤務していれば常勤と認められる可能性があります。
一方で、実態が伴わなければ、常勤性は否定されます。
他の業務との兼業
他事業との兼業が全面的に禁止されているわけではありませんが、勤務実態や時間的制約により、建設業務に支障があると判断されれば常勤性は否定されます。
※農業など季節性の強い業務との兼業は認められる場合あり。
社会保険未加入
法人や常用労働者を5人以上雇う個人事業所で社会保険未加入の場合、原則として常勤性が否定される可能性が高くなります。
ただし、手続き中である場合や加入義務のない場合は、説明資料や保険取得届の控え等の提出で補完できる可能性があります。
実務上の注意点とトラブル防止
虚偽の申請は厳禁
常勤性を偽って申請した場合、建設業法違反により以下の処分を受ける可能性があります:
- 許可の取消し
- 営業停止処分
- 刑事罰(虚偽申請に該当)
実態と異なる申告は避け、書類も正確なものを添付しましょう。
常勤者の変更があった場合の届出
経営業務の管理責任者や専任技術者等に変更があった場合は、「変更日から30日以内」に変更届を提出する必要があります(建設業法施行規則第7条等)。
届出の際には、新任者の常勤性を示す資料を添付する必要があります。
まとめ:常勤性は許可の根幹を支える要件
常勤性の要件は、建設業許可を取得・維持するために極めて重要です。
判断は「呼称」や「提出書類の形式」だけではなく、「実態」に基づいて行われます。
必要書類を整えるだけでなく、自身の勤務形態や業務実態についても今一度確認しておきましょう。
不安がある場合は、建設業許可に精通した行政書士などの専門家に相談することで、スムーズな許可取得とトラブル回避が可能になります。