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建設業許可における鋼構造物工事業の取得ガイド:資格・要件・申請を徹底解説

鋼材を使った橋梁や鉄塔、タンクなどを施工する鋼構造物工事業は、建設業許可の中でも専門性が高く、社会インフラを支える重要な役割を担っています。この記事では、鋼構造物工事業の許可取得に必要な要件や手続き、実際の工事例、取得によるメリットまでをわかりやすく解説します。これから許可取得を目指す方はもちろん、既に建設業に携わっている方にも役立つ内容です。

目次

鋼構造物工事業とは?許可が必要なケースと工事範囲

鋼構造物工事業とは、鋼材を加工し、組み立てや接合によって構造物や工作物を築造する工事を指します。代表的な例として、橋梁、鉄塔、石油やガスの貯蔵タンク、屋外広告物、水門などがあります。なお、立体駐車場は構造や機械設備の割合によって鋼構造物工事業、機械器具設置工事業、または建築一式工事業のいずれに該当するかが分かれます。船舶は建設業の対象外であるため、この業種には含まれません。

建設業法では、税込みで500万円以上の工事を請け負う場合、原則として許可が必要です。建築一式工事については特例があり、1,500万円以上または延べ面積150㎡を超える木造住宅を請け負う場合に許可が必要となります。契約金額の判定には消費税が含まれ、発注者から材料が支給される場合は、その市場価格や運搬費も加算します。許可の要否は元請・下請を問わず同じ基準で判断されます。

他業種との区分と附帯工事の扱い

鋼構造物工事業と、とび・土工工事業は現場で混同されることがあります。例えば橋梁工事の場合、橋脚の基礎をつくる工事はとび・土工工事業に該当し、その上に鋼製の橋桁を架設する作業は鋼構造物工事業に該当します。工事の種類ごとに適用業種が異なるため、契約内容を正確に把握することが大切です。

また、鋼構造物の施工に付随してコンクリート打設や型枠組立などを行うこともありますが、これらが附帯工事と認められる場合は鋼構造物工事業の許可で一体的に請け負うことができます。ただし、自社で附帯工事を施工する場合は、その工事に必要な配置技術者を置くか、当該業種の許可を持つ業者に下請として施工してもらう必要があります。

鋼構造物工事業許可取得の要件

経営業務を適正に行える体制の整備

令和2年の法改正により、従来の「経営業務管理責任者」の必置要件は廃止されました。現在は、常勤役員等を中心に、経営業務を適正に行える体制が整っていることが必要です。役員や管理職の経験、職務分担、社内の管理規程などによって体制が確認されます。

専任技術者の配置

営業所ごとに専任技術者を配置する必要があります。鋼構造物工事業の場合、充当できる資格は、技術士(建設部門〔鋼構造及びコンクリート等〕)、1級または2級土木施工管理技士、1級または2級建築施工管理技士(該当区分)、あるいは鉄工・製缶などの関連種目の技能士などです。二級建築士は原則としてこの業種の専任技術者資格には該当しません。

資格がなくても、一定の学歴と実務経験の組み合わせで要件を満たすことができます。大卒・短大・高専の指定学科卒は3年以上、専修学校(専門士・高度専門士)は3年以上、それ以外の専門学校や高校は5年以上、学歴不問の場合は10年以上の鋼構造物工事に関する実務経験が必要です。

なお、鋼構造物工事業は指定建設業に該当します。特定建設業許可を取得する場合は、営業所専任技術者が1級国家資格者等であることが求められます。

財産的基礎と社会保険加入

許可を取得するには、自己資本または資金調達能力が500万円以上であることが必要です。また、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への適正加入(適用除外の場合を除く)が許可・更新の要件となっています。

実務経験の証明と申請準備

実務経験を証明するには、工事請負契約書や工事実績証明書、給与明細、卒業証明書、資格証などが必要です。契約書や証明書には、工事の内容、金額、期間、担当業務などが明確に記載されている必要があります。経験期間は連続している必要はありませんが、合計で必要年数を満たしていなければなりません。

書類が不足していたり、記載内容に不備があったりすると、許可は下りません。申請準備は余裕をもって進めることが重要です。

許可申請の流れと申請先

申請は、営業所が1都道府県内だけであれば知事許可、2つ以上の都道府県にある場合は大臣許可が必要です。流れは、まず要件を満たしているかを確認し、必要な書類を揃えます。その後、申請書を作成し、添付書類と一緒に提出します。審査期間は通常1〜3か月程度です。

申請にかかる費用

申請手数料は全国共通で、知事許可は新規9万円、更新5万円、業種追加5万円、大臣許可は新規15万円、更新5万円、業種追加5万円です。決算変更届は無料ですが、添付する納税証明書などの取得には別途費用がかかります。行政書士など専門家に依頼する場合は、業務範囲によって数万円から数十万円程度の費用が発生します。

許可取得のメリット

鋼構造物工事業の許可を取得すると、税込500万円以上の工事を元請・下請いずれでも受注できるようになります。公共工事や大規模工事では許可の有無が選定基準になることも多く、発注者からの信頼性が向上します。また、金融機関や行政機関に対して一定の財務基盤やコンプライアンス意識を示すことができ、融資や補助金の申請で有利に働く場合があります。

まとめ

鋼構造物工事業の許可取得は、事業規模の拡大や信頼性の向上に直結する重要なステップです。要件は多岐にわたりますが、ひとつひとつ確実に準備を進めれば、許可取得は決して不可能ではありません。許可を機に、より大きな案件への挑戦や事業基盤の強化を図ることができるでしょう。もし要件の確認や申請準備に不安があれば、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

監修者プロフィール

西條 朋美(にしじょう ともみ)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

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