建設業を営むには、建設業許可の取得・維持が欠かせません。そして、その前提となるのが「欠格要件に該当しないこと」です。この記事では、建設業許可における欠格要件の内容と対象者、該当時の影響、そして再申請に向けた具体的な対応策まで、正確かつ実務的に解説します。
欠格要件とは何か|許可取得・維持の前提条件
建設業許可の申請・更新には、建設業法第8条に定められた「欠格要件に該当しないこと」が必須です。これは、社会的信用や法令遵守の姿勢を問うものであり、一定の事情に該当する者には許可が与えられず、または取消されることがあります。
欠格要件は、単に個人の事情に限らず、法人の役員や重要な使用人まで対象となります。知らずに該当していた場合、会社全体が大きなリスクを抱える可能性もあります。
欠格要件の対象者と範囲
欠格要件が適用される対象は、次のとおりです。
- 個人事業主:事業主本人
- 法人:業務を執行する役員(代表取締役など)
- 政令で定める使用人:支店長・営業所長など重要な地位にある者
ここで注意したいのは、従業員全員が対象ではないという点です。現場作業員や事務職員は原則として対象外ですが、役職を兼任している場合は別です。
欠格要件の内容と具体例
建設業許可の欠格要件には、以下のような事由が定められています。
自己破産手続開始決定を受けている者
破産手続き開始決定を受けた時点で、欠格要件に該当します。ただし、裁判所によって免責許可決定が確定し、復権が認められた場合、欠格要件は解消されます。破産後の再申請では、経緯や現在の財務状況の説明が求められるため、準備が重要です。
禁錮以上の刑に処せられた者
禁錮や懲役刑を受けた場合、刑の言渡しが確定した日から5年間は許可が受けられません。執行猶予が付いている場合でも、この5年間は同様に欠格要件に該当します。
建設業法違反で罰金刑を受けた者
建設業法に違反し、罰金刑を受けた者も、刑の執行を終えてから5年間は欠格要件に該当します。内容によっては許可取消処分が科されることもあり、再申請にあたっては慎重な対応が必要です。
許可取消処分を受けた者
行政庁による聴聞等の手続きを経たうえで、建設業法違反により許可を取消された者は、取消の日から5年間は新たな許可を取得できません。なお、自主的に廃業した場合は欠格には該当しませんが、処分逃れと見なされた場合は実質的に同様の扱いとなることがあります。
成年被後見人または被保佐人
精神上の理由により後見・保佐の審判を受けている場合、許可申請はできません。該当の疑いがある場合、行政庁の求めに応じて医師の診断書を提出することがあります。
暴力団関係者
暴力団員である者、または脱退後5年を経過していない者は欠格要件に該当します。暴力団排除の観点から、厳格に運用されています。
欠格要件に該当しないことを証明する書類
許可申請時には、欠格要件に該当しないことを以下の書類で証明します。
- 誓約書(様式第六号):欠格要件に該当しない旨の自己申告
- 登記されていないことの証明書:後見・保佐等の登記がないことを証明(法務局)
- 身分証明書:破産者や禁治産者でないことの証明(本籍地の市町村)
- 医師の診断書:行政庁が必要と判断した場合に限り提出
書類の不備は不受理や審査遅延の原因になるため、事前に管轄行政庁への確認が大切です。
欠格要件に該当した場合のリスクと対策
虚偽申請は重い処罰の対象に
欠格要件に該当しているにもかかわらず、申請書に虚偽の記載を行った場合、建設業法違反として懲役または罰金刑(法第50条)が科される可能性があります。さらに、許可取り消し、公表、業界内での信用失墜など、企業存続に関わる事態にも発展しかねません。
欠格役員の辞任による対処
法人の役員が欠格要件に該当した場合は、その役員の辞任によって欠格状態を解消できる場合があります。ただし、会社法上の手続(株主総会決議・登記変更等)を経たうえで、速やかな変更登記を行う必要があります。
欠格期間終了後の再申請と注意点
欠格期間(通常5年間)が経過すれば、再度建設業許可を申請することが可能です。ただし、以下の点に留意しましょう。
- 欠格の事実を隠さず正直に申告
- 経済状況や事業体制の改善点を丁寧に説明
- 必要書類を再度一式準備(過去のものは使用不可)
特に破産者や取消経験者の再申請では、過去の経緯と反省、再発防止策の提示が求められます。専門家の助言を受けながら慎重に進めましょう。
専門家への相談を迷わずに
欠格要件は一見分かりやすく見えても、個別の事情により判断が分かれることがあります。
- 弁護士:法的判断、刑罰・訴訟との関係性の検討
- 行政書士:申請実務、書類作成、欠格要件の該非確認
建設業許可に強い専門家に相談することで、許可取得・維持のリスクを未然に防ぎ、安心して事業運営を進めることができます。初回相談が無料の事務所も多くありますので、早めの相談をおすすめします。
まとめ:欠格要件を理解し、健全な経営体制を
建設業許可の欠格要件は、事業者の信用力を支える基本条件です。役員や使用人が欠格要件に該当していれば、たとえ業務に支障がなかったとしても、許可の取得・維持に支障が出る可能性があります。
日頃から法令遵守を徹底し、役員人事や経営状況に注意を払うことで、万一のトラブルを防ぐことができます。許可を維持することは、単なる形式的要件ではなく、信頼と発展の基盤です。しっかり理解し、必要な対策を怠らないようにしましょう。