建設業許可を受けている事業者が、営業所の所在地や名称を変更した場合には、建設業法に基づき「変更届」の提出が必要です。この記事では、変更届が必要となるケース、提出期限、必要書類、手続きの流れなどを分かりやすく解説します。確実な届け出によって、法令遵守とスムーズな事業運営を両立させましょう。
営業所の変更時に必要な「変更届」とは?
提出義務と提出期限
建設業許可を受けた事業者が以下のような事項を変更した場合は、変更後30日以内に所管の行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)に「変更届」を提出する必要があります。
- 営業所の所在地の変更(移転)
- 営業所の名称の変更
- 営業所の新設または廃止
なお、電話番号の変更は原則として提出義務の対象外です。ただし、営業所の連絡先として登録している場合は、必要に応じて届け出るとよいでしょう。
【補足】提出期限を過ぎてしまった場合は、速やかに所管行政庁に相談し、指示を仰ぐことが推奨されます。
変更届が必要なその他のケース
営業所に関する変更以外にも、以下のような重要事項の変更には変更届が必要です。
- 商号または名称の変更
- 代表者の氏名・住所の変更
- 役員の就任・退任
- 資本金の額の変更
これらの変更も、原則として変更後30日以内に届け出が必要です。変更の種類によって添付書類や様式が異なりますので、事前に所管行政庁のウェブサイトや窓口で確認しましょう。
変更届を怠った場合のリスク
変更届の未提出や虚偽の届出には、以下のようなリスクがあります。
- 行政庁からの是正指導や勧告
- 建設業法第50条に基づく10万円以下の罰金
- 建設業許可の更新審査への悪影響
- 信用低下や取引先とのトラブルの発生
実務上は、まず行政庁から改善の指導がなされることが多いですが、長期放置や悪質なケースでは処分の対象となることもあります。
変更届に必要な書類
基本書類
- 変更届出書(様式第二十二号の二)
- 変更内容を証明する書類(変更内容に応じて異なる)
各行政庁によって求められる書類に違いがあるため、必ず提出前に確認してください。
変更内容別の添付書類例
変更内容 | 添付書類の例 |
---|---|
営業所の所在地変更 | 不動産登記簿謄本、賃貸借契約書の写しなど |
営業所の名称変更 | 商業登記簿謄本、印鑑証明書など |
代表者の変更 | 住民票、戸籍抄本、就任承諾書など |
【注意】添付書類には有効期限があるものもあります。提出前に最新のものを準備してください。
書類の入手と記載方法
様式の入手
「変更届出書(様式第二十二号の二)」は以下から入手できます:
- 国土交通省のウェブサイト
- 各都道府県庁の建設業担当課のウェブサイト
- 窓口配布
PDFやWord形式で提供されているため、ダウンロードしてパソコンで作成するのが一般的です。
記入のポイント
第一面(基本情報)
- 許可番号、商号、代表者氏名、営業所の所在地などを正確に記載
- 許可通知書や登記簿謄本を参考に記載内容を確認
第二面(変更内容)
- 変更前と変更後の情報を明確に記載
- 変更年月日を忘れずに
- 変更理由を簡潔に記入(例:「営業所移転のため」)
不明点がある場合は、行政庁に直接問い合わせるか、行政書士に相談するのがおすすめです。
変更届の提出方法とその後の流れ
提出方法
原則は、所管行政庁の窓口への持参提出です。ただし、以下の方法にも対応している場合があります。
- 郵送(追跡可能な方法が推奨)
- 一部自治体でのオンライン提出(試行・限定導入中)
提出方法は、行政庁によって異なるため、事前に必ず確認しましょう。
【控えの保管】提出時には控えを取得し、受付印をもらって保管しておきましょう。
提出後の対応
- 行政庁による内容確認・受理
- 必要に応じて補足資料の提出依頼
- 変更届出済証などが発行される(※許可証自体が書き換えられるわけではありません)
なお、変更届の提出には手数料は不要です。
変更後の社内外対応も忘れずに
営業所の変更後には、以下のような社内外の対応もあわせて行いましょう。
- 取引先・金融機関・保険会社への通知
- 名刺・ウェブサイト・契約書類の表記変更
- 従業員への情報共有と業務連絡体制の確認
これにより、混乱を避け、信用の維持にもつながります。
まとめ:営業所の変更届は許可維持のための基本手続き
営業所の移転や名称変更といった変更があった場合、建設業許可を維持するためには確実な変更届の提出が必須です。30日以内の届け出が義務付けられており、怠ると罰則や更新審査への影響が生じるおそれがあります。
不安がある場合や手続きが煩雑な場合は、行政書士などの専門家に相談し、確実かつスムーズに手続きを進めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q:電話番号の変更も届け出が必要ですか?
A:原則として変更届の対象ではありませんが、必要に応じて書面上の情報更新が推奨されます。
Q:提出期限を過ぎた場合はどうなりますか?
A:速やかに所管の行政庁に相談すれば、指導のうえで対応可能なケースがほとんどです。放置は避けましょう。
Q:手数料はかかりますか?
A:変更届の提出には手数料はかかりません。別途費用が必要な申請と混同しないように注意が必要です。
必要な手続きを正しく行い、安心して建設業を営んでいきましょう。