建設業者が公共工事に参加するためには「経営事項審査(経審)」を受ける必要があります。本記事では、経審の基本から、評点アップのための具体的な13の方法、最新の制度改正までを分かりやすく解説。御社の成長戦略に役立つ情報を厳選してお届けします。
経営事項審査(経審)とは?公共工事への第一歩
経審は、建設業許可を持つ業者が、公共工事の入札に参加する際に必要な「総合評定値(P点)」を取得するための審査制度です。
建設業許可が「事業の開始条件」だとすれば、経審は「公共工事の土俵に立つための資格審査」と言えるでしょう。
P点は、企業の経営力・技術力・社会的責任を客観的に評価したもので、自治体や発注機関が入札参加者を選定する重要な指標になります。
総合評定値(P点)の内訳と構成
P点は以下の4つの評価項目から構成され、それぞれ加重平均によって算出されます。
評価項目 | 内容 |
---|---|
Y(経営状況) | 財務健全性(自己資本比率・負債比率など) |
X(経営規模) | 完成工事高・業種数・技術職員数など |
Z(技術力) | 技術職員の資格・配置、過去の施工実績 |
W(社会性等) | 社会保険加入状況、労働福祉、防災・法令遵守など |
これらの要素をバランスよく向上させることが、P点アップのカギとなります。
審査基準日と有効期間の正しい理解
- 審査基準日:経審申請に用いる直近の事業年度の決算日
- 有効期間:審査基準日から起算して1年7ヶ月間
この期間内であれば、入札参加資格としてP点を活用できます。
有効期間が切れてしまうと公共工事への入札ができなくなるため、余裕を持ったスケジュールで毎年申請するのが一般的です。
評点アップのための13の実践策【要素別】
▶ X(経営規模)対策
1. 完成工事高を最大化する
受注案件の選定と工事効率の向上によって、完成工事高(X1)を意識的に高めましょう。複数業種で許可を取得している場合は、バランス良く実績を積むとX評点が向上します。
2. 多業種許可を検討する
許可業種数の増加(X2)もX評点の一因です。ただし、無理な業種追加は避け、自社の得意分野と親和性が高い業種に絞ることがポイントです。
▶ Y(経営状況)対策
3. 自己資本比率を高める
財務の安定性が評価されるため、内部留保を増やしたり、資本増強によって自己資本比率を改善しましょう。
4. 流動比率の改善
流動資産と流動負債のバランスを見直し、短期的な支払能力の指標である流動比率を意識して調整することも有効です。
5. 遊休資産の整理
不採算資産を売却して資金を確保し、自己資本の増強や財務改善に役立てましょう。
▶ Z(技術力)対策
6. 技術職員の資格取得を奨励
施工管理技士、建築士などの資格取得支援制度を導入し、Z評点向上に貢献する技術職員を育成しましょう。
7. 実績の蓄積と記録整備
直近3年間の完成工事実績がZ評点に影響します。正確に記録を残し、定期的に更新する体制が重要です。
▶ W(社会性等)対策
8. 社会保険への適正加入
健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入状況は、W評点で厳しくチェックされます。未加入は大幅な減点対象となります。
9. 労働福祉の充実
有給取得促進、育児・介護制度の導入など、働きやすい職場環境の整備も評価につながります。
10. 防災・地域貢献活動の推進
地域の防災訓練参加や災害時の復旧支援活動は、社会性の高い企業として評価されます。
11. コンプライアンス体制の整備
内部通報制度や定期研修など、法令順守体制を整えることは、W評点を高めるだけでなく企業価値の向上にも貢献します。
12. CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用
現時点では直接評価項目ではないものの、CCUSへの登録や活用状況は間接的に社会性や労務管理の評価につながる可能性があります。
▶ その他の共通対策
13. 継続的な申請・改善の仕組み化
経審は一度の対策で終わりではありません。毎年の申請に向け、社内で経審担当者を設け、定期的なP点分析・改善施策をルーチン化しましょう。
最新の制度改正に注意!
経営事項審査の制度は定期的に見直されます。たとえば…
- 社会保険未加入の企業に対する減点措置の強化
- 新たな社会性項目(環境対策など)の導入検討
- 書類様式の変更やオンライン申請の導入
最新の制度変更については、【国土交通省 建設業経審ページ】や【地方整備局のお知らせ】を定期的に確認しましょう。
見落としがちな実務上の注意点
- 書類不備は「減点」ではなく「評価不能」の原因に
- 数字の整合性、添付資料の漏れ、業種別実績の記載ミスに要注意
- 審査機関との事前相談は積極的に行い、誤解を防ぐ
まとめ:経審は経営改善そのもの!
経営事項審査のP点アップは、単なる入札資格の獲得にとどまらず、企業の財務・組織・技術・社会性をトータルに底上げする絶好の機会です。
- 現状を「見える化」して
- 自社の強みと弱みを把握し
- 継続的に改善する
このサイクルを回すことが、結果として公共工事の受注機会を拡大し、企業の成長を後押しします。
必要に応じて、貴社の経審対策を支援できる専門家(行政書士・中小企業診断士等)への相談もご検討ください。