建設業許可を取得・維持するうえで欠かせないのが、「経営能力の証明」です。かつては「経営業務の管理責任者(いわゆる経管)」を置くことが必要とされていましたが、令和2年(2020年)の制度改正により、この要件は大きく変わりました。
本記事では、最新の建設業許可制度における経営業務管理の要件や考え方、証明方法、注意点を、旧制度との違いを踏まえて丁寧に解説します。
制度改正で何が変わった?旧「経管制度」からの転換
2020年10月の建設業法施行規則改正により、「経営業務の管理責任者(経管)」という制度は廃止され、代わって「経営業務の管理を適切に行う能力」がある体制を整えていることが要件とされました。
改正のポイント
- 役職や年数に関係なく、実際に経営業務に関与していれば評価される
- 形式的な肩書よりも「実態重視」へシフト
- 柔軟な審査で、中小企業や事業承継時の対応がしやすくなった
現在の「経営能力要件」とは?評価されるポイント
現在の制度では、「建設業の経営業務を適切に行う能力」を持つ体制であることが求められます。具体的には、一定の経営経験を持つ者を適切に配置し、実際に意思決定に関与している体制があれば、許可取得が可能です。
評価の観点
- 建設業に関する経営業務の経験
- 配置された人物の職責と意思決定への関与
- 企業全体の統治・管理体制(組織図、就業規則など)
年数や肩書に縛られるのではなく、「誰が、どのように、どの範囲まで経営に関与しているか」が審査の核心です。
経営能力を証明するために必要な資料
審査では、経営への関与実態を示すために、次のような書類の提出が求められます(必要書類は都道府県により異なる場合があります)。
主な証明資料の例
- 会社の組織図(経営責任者の配置が明確なもの)
- 役員会議議事録、就業規則(意思決定の範囲を明示)
- 委任契約書、業務分掌表(執行権限の委任が明示されたもの)
- 過去の建設業許可・届出記録
- 建設業の経営業務経験を証明する資料(確定申告書・契約書など)
たとえば、過去に建設業者を経営していた個人事業主であれば、確定申告書や工事請負契約書などが有力な証拠になります。
よくある誤解と注意点
❌「登記されていないとダメ」→ 実質的な経営関与があればOK
旧制度では「登記上の役員」であることが重視されましたが、現在は執行役員や事業部長等でも、経営業務の実態があれば認められます。
❌「5年の経験が必須」→ 年数要件は撤廃済み
旧制度では一般建設業で5年、特定建設業で7年(+指導監督経験)が必要でしたが、現在は年数は明示されていません。実態に即した柔軟な判断がされます。
事例紹介:新制度下での許可取得成功・失敗ケース
成功事例:組織図と委任契約で体制を証明
C社では、代表取締役ではないものの、建設部門の統括責任者である執行役員を「経営能力のある者」として申請。組織図や委任契約書を整備し、議事録で意思決定関与を示すことで審査を通過しました。
失敗事例:経営業務の実態が確認できなかった
D社は過去に経営業務経験のある人物を配置したが、書面での業務関与の証拠がなく、許可が不許可となりました。単に過去に建設業を営んでいたという主張だけでは不十分です。
経営体制の維持と後任者育成の重要性
建設業許可の維持には、経営体制の変化に迅速に対応する必要があります。経営幹部の退任・変更があった場合は、速やかに体制変更届や後任の準備が必要です。
将来の許可更新や事業承継も見据え、経営能力を持つ後継者の育成は必須の経営課題となっています。
専門家に相談するメリット
制度の変化に対応した書類整備や体制構築は専門的で煩雑なため、行政書士などの専門家に相談することが有効です。専門家は、以下の点でサポートしてくれます。
- 個別状況に応じた証明方法の提案
- 必要書類の整備・チェック
- 行政庁との対応や補正対応
初回相談無料の事務所も多く、早期相談が成功への鍵となります。
まとめ:正確な理解と準備が許可取得への第一歩
建設業許可制度の変化により、経営管理体制の審査は形式から実態重視へと移行しました。旧制度との違いを正確に理解し、実態に即した証明書類を整えることで、スムーズな許可取得が可能になります。
自社の体制に不安がある場合は、迷わず専門家に相談し、確実な許可取得・更新を目指しましょう。