建設業界では慢性的な人手不足を背景に、外国人技能実習生や特定技能外国人を受け入れる事業者が年々増えています。こうした外国人の受け入れにあたっては、国土交通省が推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」への登録が、特定の在留資格においてはすでに法令や告示で義務づけられています。本稿では、その法的背景、対象者、登録の流れと注意点を、初めて登録を検討する事業者の方にも分かるよう丁寧に解説します。
CCUS登録義務化の背景と法的根拠
CCUSは、建設業に従事する技能者の資格や就業履歴、社会保険加入状況などを電子的に記録し、技能の「見える化」を図る仕組みです。外国人技能者も例外ではなく、特定の制度下では登録が義務化されています。
まず、外国人技能実習生(建設関係職種)の場合、2019年7月5日付の国土交通省・法務省・厚生労働省の連名公表(告示及び通知)により、技能実習計画の認定要件として受入事業者および技能実習生本人のCCUS登録が義務化されました。実務では「1号実習生は2号移行までに登録完了」が必要です(建設分野技能実習に関する事業協議会資料参照)。
また、特定技能1号(建設分野)についても、国土交通省告示「建設分野特定技能外国人受入れに係る運用方針」に基づき、受入計画認定の要件として事業者登録(受入企業)と技能者登録(特定技能外国人本人)が義務とされています。特に、在留中の外国人を特定技能1号に切り替える場合は認定申請時までに、海外在留者を受け入れる場合は入国後1か月以内に登録カードの写し提出が求められます。
一方、すべての建設事業者や全ての技能者に一律の義務化が決定しているわけではなく、現時点での法的義務はこれら特定の在留資格に限定されています。国土交通省は2024年7月に「CCUS利用拡大に向けた3か年計画」を公表しましたが、これは普及促進策であり、義務化範囲の一斉拡大を定めたものではありません。
登録対象となる外国人技能者と要件
技能実習生(建設関係職種)の場合、受入事業者は技能実習計画の認定申請前に事業者登録を行い、実習生本人も1号から2号への移行時までに技能者登録を済ませる必要があります。登録には氏名、国籍、生年月日、技能実習計画の内容、保有資格などを正確に入力します。不適切な登録や期限内未登録は、認定の取消しや改善指導の対象となることがあります。
特定技能1号(建設分野)では、受入企業が申請前に事業者登録を完了させ、本人は在留状況に応じた期限内に技能者登録を行うことが必須です。登録には氏名、国籍、生年月日、技能試験合格証明書などが必要となります。登録を怠れば、受入計画が認定されません。
なお、外国人建設就労者受入事業は2023年3月31日で終了しており、新規の受入れはできません。この制度に基づくCCUS登録要件も、現在は新規には発生しません。
登録のメリット
CCUS登録の最大の価値は、技能や経験の客観的な証明が可能になることです。これにより、外国人技能者は昇給や昇格、より高度な業務への挑戦といったキャリア形成の機会を得やすくなります。事業者にとっても、登録情報を活用して適材適所の人員配置が可能となり、生産性や安全性の向上につながります。また、適切な評価と処遇により定着率の向上も期待できます。
登録手続きと注意点
事業者登録は、CCUS公式サイトのオンライン申請、または認定登録機関窓口で行います(郵送受付は原則終了しています)。必要書類は建設業許可の有無で異なり、許可証がない場合も登録は可能です。社会保険に未加入の場合は、適用除外理由を明記した書類が求められます。
技能者登録も同様にオンラインまたは認定登録機関窓口で行い、本人確認書類や資格証明書を提出します。いずれの場合も、登録内容に変更が生じたときは速やかな更新が必要です。
専門家の活用
初めてCCUS登録を行う事業者にとっては、必要書類の準備や期限管理、入力内容の正確性などに不安を感じることも多いでしょう。その場合、建設業界に精通した行政書士に申請代行を依頼する方法があります。専門家に依頼すれば、書類の不備や期限遅延を防げるだけでなく、CCUSを経営や人材育成にどう活かすかという視点でのアドバイスも受けられます。
まとめ|外国人受け入れと建設キャリアアップシステム(CCUS)登録義務
外国人技能実習生や特定技能1号の受け入れを予定しているなら、まずは自社のCCUS登録状況を確認し、必要に応じて速やかに申請を進めましょう。期限を過ぎれば受け入れ計画の認定が下りない場合もあります。迷ったときは、建設業に精通した行政書士などの専門家に相談するのが安心です。今日から準備を始め、外国人技能者と共に安全で持続可能な現場づくりを進めていきましょう。