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建設キャリアアップシステム(CCUS)のデメリットと対策を正しく理解する

「建設キャリアアップシステム(CCUS)」という言葉を耳にする機会が増えていませんか。
国土交通省が推進し、建設業界で働く技能者の資格や就業履歴を“見える化”するこの制度は、技能者の評価や処遇改善を目的としています。公共工事や大規模民間工事でも活用が広がり、経営事項審査(経審)や総合評価落札方式で評価されるケースも増えてきました。将来を見据えると、避けて通れない仕組みになっていく可能性は高いでしょう。

それでも、「登録はした方がいいと分かっていても、負担や費用が心配」という本音もよく聞きます。ここでは、初めて登録を考えている事業者の方に向けて、CCUSのデメリットとその対策、そして登録しないことで起こり得る影響を、できるだけわかりやすく、現場目線でお伝えします。

目次

登録手続きの負担

初めての登録は、正直なところ「手間がかかるな」と感じる方が多いはずです。
事業者登録と技能者登録の両方が必要で、会社や技能者の情報、資格証明書など複数の書類をそろえ、オンラインで入力・アップロードしていきます。不備があれば差し戻しになり、再提出…という流れも珍しくありません。
中小企業や一人親方にとっては、本業の合間にこうした作業を進めるのはなかなかの負担です。
そんなときは、行政書士や登録支援事業者の代行サービスが心強い味方になります。費用はかかりますが、書類作成から申請、制度や運用方法の相談まで任せられるので、「やらなきゃ…」というプレッシャーから解放され、安心して本業に集中できます。

現場での運用負荷

登録後は、現場で技能者の就業履歴を記録する運用が始まります。
原則はICカードをカードリーダーで読み取りますが、専用リーダーだけが唯一の手段ではありません。スマートフォンやQRコード、API連携による打刻、さらには電波が弱い現場でのオフライン記録など、現場に合わせた方法を選べます。

とはいえ、現場管理者にとっては新たな仕事が増えるのも事実です。機器の設置や動作確認、技能者への操作説明、エラー対応など、慣れるまでは気を遣う場面が多いでしょう。
そこで役立つのが、CCUSと連携できるクラウド型の出面管理システムです。出退勤や就業履歴を自動で記録・集計でき、事務作業の負担をぐっと減らせます。

費用負担と設備投資

CCUSには、初期登録料と継続的な利用料があります。

技能者登録は簡略型2,500円、詳細型4,900円。事業者登録は資本金規模に応じた金額(5年ごと更新)です。運用段階では、管理者IDの年間利用料(1IDあたり11,400円、一人親方は2,400円)や、元請が負担する現場利用料(1人日・1現場10円)が必要になります。

カードリーダーは数千円から数万円まで幅があり、レンタルも可能。スマートフォンやQRコードを使えば、機器購入を避けることもできます。

費用の一部は助成金で補助されますが、厚生労働省の制度では主に登録料や能力評価手数料が対象で、管理者ID利用料や現場利用料などの運用経費は対象外です。条件や申請期限は必ず事前に確認しましょう。

登録しない場合に見える景色

「登録しなくても仕事はできる」——これは事実です。
ですが、長い目で見れば、いくつかの不利がじわじわと現れてくるかもしれません。

技能者の資格や就業履歴を客観的に証明できなければ、元請や発注者からの評価で不利になることがあります。経審では就業履歴管理体制や能力評価レベルの取得が加点対象となり、総合評価落札方式でも加点や条件化が広がっています。こうした機会を逃すのは、将来的な受注チャンスを減らすことにつながります。

一人親方の場合も同じです。登録によって自分の就業履歴を提示しやすくなり、信頼性の向上や新規取引先との接点につながります。賃金額そのものが記録されるわけではありませんが、評価や待遇改善の土台にはなります。

最新情報とサポートの活用

CCUSは制度もシステムも更新が続いています。
公式サイトにはマニュアルやFAQが充実しており、YouTube「CCUSチャンネル」では操作方法や事例が動画で紹介されています。登録者向けのメンバーズメール、全国各地で開かれる説明会や相談会も情報源として有効です。

困ったときは、公式の電話・メール窓口に遠慮なく相談してください。制度や操作の疑問は、早めに解消することがスムーズな運用への近道です。

まとめ

CCUSは、技能者一人ひとりの努力や経験を“見える形”にして、正当に評価される仕組みです。
確かに、登録や運用には手間もお金もかかります。それでも、その先には、受注機会の拡大や評価向上といった大きな可能性があります。

「義務だから」ではなく、「これからの仕事の幅を広げるため」にどう活用するか。そう考えると、CCUSは単なる制度ではなく、自社や自分の未来を形づくる道具になります。
今、迷っているなら、まずは情報を集め、できる準備から始めてみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール

西條 朋美(にしじょう ともみ)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

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