防水工事業は、建築物を水の侵入から守るために欠かせない専門工事です。屋上やベランダ、外壁、地下構造物など、あらゆる箇所で雨水や地下水を遮断し、建物の耐久性を保ちます。この記事では、防水工事業で建設業許可を取得するための要件や申請の流れ、そして許可を取ることで広がる事業の可能性について、初めての方にも分かりやすく解説します。
防水工事業とは?建設業法上の位置づけ
防水工事業は、建設業法で定められた29業種のひとつです。シート防水、塗膜防水、アスファルト防水、シーリング工事など、多様な工法を駆使して建物を水から守ります。こうした工事は、建物の寿命を延ばし、居住者や利用者の快適さを保つために不可欠です。
防水工事の分野では、近年、環境にやさしい材料や長寿命化を図る工法も増えており、持続可能な建築の実現にも貢献しています。許可を取得すれば、これら高度な工事を受注できるだけでなく、顧客からの信頼性も高まり、事業の幅が広がります。
許可が必要な工事と不要な工事の違い
建設業許可が必要かどうかは、工事の種類と金額で決まります。防水工事業のような「専門工事」の場合、請負代金(消費税を含む)が500万円以上の工事を請け負うときに許可が必要です。ここでいう請負代金は、契約に含まれる工事費用や材料費を合計した額であり、施主が別途手配する材料などは含まれません。
一方、建築一式工事には別の基準があり、請負代金が1,500万円以上、または木造住宅で延べ面積が150㎡以上の場合に許可が必要となります。いずれの場合も、この基準を超える工事を無許可で行うと建設業法違反となり、罰則の対象になります。
一般建設業許可と特定建設業許可の違い
許可は「一般」と「特定」に分かれます。違いは下請契約の規模です。元請として発注者から直接請け負った工事で、下請に出す金額の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる場合は、特定建設業許可が必要です。特定の許可を取るには、一般よりも厳しい専任技術者の要件や財産的基礎の基準を満たす必要があります。
許可取得に必要な要件
経営業務を適正に行う体制
2020年の法改正により、「経営業務の管理責任者」という個人要件は廃止されました。現在は、建設業の経営に関する一定の経験を持つ常勤役員などを配置し、その補佐体制を整えていることが求められます。防水工事業に限らず、類似工事の経営経験も要件を満たす場合があります。
専任技術者
防水工事業では、施工に関する専門資格や学歴+実務経験、または長年の実務経験によって専任技術者になれます。例えば、一級または二級建築施工管理技士(仕上げ)や一級・二級防水施工技能士などの資格が代表的です。資格がない場合は、指定学科卒業+3~5年の実務経験、または10年以上の実務経験でも認められます。特定建設業の場合は、指導監督的な実務経験(原則2年以上)も必要です。
財産的基礎・金銭的信用
許可を取得するには、500万円以上の自己資金または同等の資金調達能力が必要です。預金残高証明書や決算書などで証明します。過去の税金滞納や不渡りの履歴がないことも重要です。
欠格要件に該当しないこと
申請者本人(法人の場合は役員等)や政令で定める使用人が、過去に建設業法違反や一定の刑罰を受けていないことが条件です。一般従業員全員が対象になるわけではありません。
防水工事業で扱う工事の種類
代表的な工法には、シート防水、塗膜防水、アスファルト防水、シーリング工事などがあります。屋上やバルコニー、外壁の目地など施工箇所に応じて工法を選びます。なお、トンネルなど土木分野の防水は別業種に該当する場合があるため注意が必要です。
塗装工事との違い
塗装工事は、美観の向上に加えて防錆や劣化防止など建物の保護も目的としています。一方、防水工事は雨水や地下水の浸入を防ぐことに特化しており、建物内部の腐食やカビの発生を防ぐために欠かせません。
許可申請の流れ
申請には、経営業務体制や専任技術者の資格・経験を証明する書類、財産的基礎を示す書類などが必要です。窓口は、営業所が1都道府県内にあれば都道府県知事、2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣(地方整備局)が担当します。工事の規模は区分に影響しません。
審査期間はおおむね1~2か月ですが、自治体や時期によって前後します。年度末など混み合う時期は時間がかかるため、余裕を持った申請が安心です。
許可取得のメリットと維持の義務
許可を取ることで顧客からの信頼が高まり、大規模工事や公共工事への道が開けます。公共工事の入札に参加するには、経営事項審査(経審)の受審が必要であり、許可業者であることが前提です。
許可を維持するには、5年ごとの更新のほか、毎事業年度終了後4か月以内の決算変更届や、役員変更などがあった際の変更届が必要です。これらを怠ると許可取消の可能性があります。
まとめ|建設業許可の防水工事業を取得する方法
防水工事業の建設業許可は、事業を拡大し、信頼性を高める大きな一歩です。必要な要件を理解し、計画的に準備を進めれば、許可取得は十分に可能です。取得後も更新や届出を怠らず、常に法令を守る姿勢が事業の成長につながります。防水工事は今後も需要が見込まれる分野です。許可取得をきっかけに、より幅広い現場で活躍できる環境を整えていきましょう。