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建設業許可の板金工事業を取得する方法:資格、要件、手続きを徹底解説

これから板金工事業で事業を拡大しようと考えている方や、建設業許可の仕組みをきちんと理解しておきたい方に向け、板金工事業許可の取得に必要な資格や要件、申請の流れ、そして取得によるメリットまで、最新制度に基づき分かりやすく解説します。

目次

板金工事業とは?定義と工事範囲

板金工事業とは、金属薄板などを加工し、建築物の外装や付属設備に取り付ける工事を指します。具体的には、金属製の外壁や金属系サイディングの施工、雨樋や水切りの取り付けなどが代表例です。建物を風雨から守り、美観を保つだけでなく、耐久性や性能に大きく影響するため、高い技術と専門知識が求められます。

ただし、金属板を使う工事であっても、屋根ふき工事は「屋根工事業」に分類されるのが原則です。また、ダクトや換気設備の設置は「管工事業」、窯業系サイディング(繊維強化セメント板など)の施工は「タイル・れんが・ブロック工事業」または施工方法に応じた他業種に分類されます。板金工事業はあくまで、金属薄板を建築物に取り付ける外装工事が中心と覚えておくと混乱しません。

建設業許可が必要となる金額基準

建設業法では、「軽微な建設工事」を除き、工事を請け負う際には建設業許可が必要です。軽微な工事の定義は次のとおりです。

  • 専門工事の場合:1件の請負代金(税込)が500万円未満の工事
  • 建築一式工事の場合:1件の請負代金(税込)が1,500万円未満、または木造住宅で延べ面積150㎡未満(一定の構造条件を満たすもの)

板金工事業は専門工事に該当するため、税込500万円以上の工事を1件でも請け負う場合は、必ず建設業許可が必要です。この金額には材料費や人件費などすべてを含みます。

一般建設業と特定建設業の違い

建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」に分かれます。板金工事業者が特定建設業許可を必要とするのは、元請として請け負った1件の工事で、下請に出す金額の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる場合です。大規模な商業施設や公共施設の外装工事を請け負う場合に該当する可能性があります。

特定許可は一般許可よりも要件が厳しく、監理技術者となる資格を持つ専任技術者や、より高い財産的基礎などが必要です。将来の受注規模を踏まえ、自社に適した許可区分を選ぶことが大切です。

板金工事業許可の主な取得要件

1. 経営の適正体制

2020年の制度改正により、「経営業務管理責任者」の専任設置義務は廃止されました。現在は「経営業務の管理を適正に行う能力があること」が求められ、役員等が過去に建設業の経営に携わった経験や、適切な経営管理体制を備えているかどうかで判断されます。

2. 専任技術者の配置

営業所ごとに、その業種に関する一定の資格または実務経験を持つ専任技術者を常勤で置く必要があります。板金工事業の場合は、1級または2級建築板金技能士、1級または2級建築施工管理技士(仕上げ)などが該当します。資格がなくても、10年以上の実務経験(学歴や他資格により短縮可)で認められる場合があります。なお、営業所専任技術者は現場常駐が要件ではなく、社内の別業務と兼務できる場合もありますが、他営業所や他社との兼務はできません。

3. 財産的基礎

請負契約を適正に履行できる財産的基礎または金銭的信用が必要です。一般許可の場合、自己資本500万円以上などが目安ですが、預金残高や直近決算の純資産額、金融機関の融資取引状況などで総合的に判断されます。

許可申請の流れ

  1. 事前準備
    自社が要件を満たしているかを確認し、必要な証明書類をそろえます。資格証や登記事項証明書、財務資料などは不備があると審査が遅れるため、事前確認が重要です。
  2. 申請先と区分の確認
    営業所が1都道府県内のみなら知事許可、2都道府県以上にある場合は大臣許可が必要です。
  3. 申請書提出と審査
    申請書類を提出すると、内容確認と審査が行われます。審査期間は概ね1か月以上で、追加資料の提出を求められることもあります。
  4. 許可証交付
    許可が下りたら、営業所の見やすい場所に掲示します。有効期間は5年で、更新は満了日の30日前までに申請します。

許可取得後の義務と注意点

許可取得後も、建設業法の遵守が求められます。事業年度終了後には、決算終了日から概ね4か月以内に「事業年度終了届(決算変更届)」を提出します。代表者や営業所所在地など許可内容に変更があった場合は、変更から30日以内に変更届を提出する必要があります。

板金工事業許可取得のメリット

許可を持つことは、発注者からの信頼を高める大きな要素です。公共工事や大規模民間工事への参入が可能になり、安定した受注につながります。また、他業者との共同受注や金融機関からの評価向上にもつながります。さらに、契約トラブル発生時には建設業法や建設工事紛争審査会など、公的な制度を活用できる環境が整います。

まとめ|建設業許可の板金工事業を取得する方法

板金工事業は金属薄板の加工・取付けを中心とした業種ですが、屋根工事業や管工事業などと混同しやすい部分も多くあります。まずは自社の工事内容を正しく業種区分に当てはめ、最新の許可要件や申請ルールを理解したうえで準備を進めることが、許可取得の第一歩です。許可を取得すれば、受注可能な工事の幅が広がり、事業の信頼性も向上します。条件を満たせるか不安な場合や書類作成に自信がない場合は、建設業許可に詳しい行政書士など専門家のサポートを受けることを強くおすすめします。

監修者プロフィール

西條 朋美(にしじょう ともみ)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

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