建設業許可を適正に維持するうえで、営業所への「令3条使用人」の配置は欠かせません。特に従たる営業所を設ける場合、その選任や変更は法令遵守とスムーズな業務運営の要となります。本記事では、令3条使用人の正しい定義、必要な要件、専任技術者との兼任の可否、変更時の手続きと注意点まで、実務に即した視点で丁寧に解説します。
令3条使用人とは何か?法律上の位置づけと役割
「令3条使用人」とは、建設業法施行令第3条に基づき、営業所に配置が求められる契約業務等の実務担当者を指す通称です。法律上は「建設業者が本店以外の営業所に置く、契約行為を行うための使用人」として規定されています。
具体的には、見積書の作成、入札の対応、契約書の締結、請負代金の請求・受領など、営業所で日常的に行われる建設業務に関する重要な判断や手続きに責任を持つポジションです。
設置が必要な営業所の範囲と令3条使用人の必要性
令3条使用人の配置が義務となるのは、本店とは別に従たる営業所(支店・営業所等)を設ける場合です。建設業許可において、各営業所ごとに法令上の責任体制が求められ、従たる営業所には契約業務の責任者である令3条使用人が不可欠です。
本店のみで事業を行っている場合は、専任技術者や経営業務管理責任者の要件は必要ですが、令3条使用人の配置は不要です。
令3条使用人に求められる要件と常勤性
令3条使用人には、法律上特定の学歴や資格要件は定められていません。しかしながら、契約の締結等を行うにあたっては、実務能力や判断力、誠実性などが求められます。行政庁は、実際の勤務実態や責任の所在などから、その適格性を総合的に審査します。
また、常勤性(その営業所に常時勤務していること)が強く求められます。勤務実態を証明するためには、出勤簿や給与支払記録等の資料が必要となります。名義だけの形式的な配置では認められません。
専任技術者との兼任はできる?制度上の取り扱い
兼任は原則可能。ただし「常勤かつ適切な業務遂行」が条件
令3条使用人と専任技術者は、原則として同一営業所内で兼任が認められています。特に中小規模の事業者では人材確保の面から、実務上よく活用されています。
ただし、兼任が可能なのは、それぞれの職務を常勤かつ十分な能力で遂行できることが前提です。業務内容が過度に重なる、又は業務量が多すぎて両立できないと判断される場合は、行政庁から否認される可能性もあります。
兼任に際しての実務的な注意点
兼任者が適切に業務を遂行しているかどうかは、勤務記録・職務分担・業務フローなどの裏付けで確認されます。可能であれば、各業務に充てる時間配分や責任範囲を社内で明確にしておくと良いでしょう。
令3条使用人を変更する際の手続きと注意点
変更届の提出義務と提出期限
令3条使用人を変更する場合は、変更後30日以内に変更届を提出する義務があります(建設業法第11条)。これを怠ると、建設業法違反として行政指導や100万円以下の罰金が科されることもあります(第50条)。
提出先と必要書類
変更届は、建設業許可を受けている行政庁(都道府県または国土交通省地方整備局)に提出します。提出書類には以下が含まれます:
- 変更届出書(営業所の使用人変更)
- 新任者の履歴書・住民票(または写し)
- 資格や経歴が分かる資料(あれば)
- 勤務実態を証する書類(雇用契約書、給与明細など)
法令遵守の重要性と実務上のポイント
令3条使用人の選任や兼任、変更は、建設業許可を適切に維持するうえで欠かせない法的義務です。不適切な選任や手続きの遅延は、行政処分や更新不許可のリスクに直結します。
制度の理解が不十分な場合は、建設業に詳しい行政書士等の専門家に相談することが安全策です。法令と実務の両方に明るい視点から、適切な人選や書類作成、手続き支援を受けることができます。
【まとめ】令3条使用人の配置は許可維持の基盤。適正な対応を
令3条使用人は、営業所における契約業務を担う責任者として、建設業許可制度の根幹に関わる存在です。設置の要否、適格性の判断、専任技術者との兼任、変更時の届け出といった各ステップにおいて、制度の趣旨を正しく理解し、実態に即した運用を行うことが、健全な経営と許可維持の鍵となります。