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建設業許可は500万円ないと無理?見せ金のリスクと正当な資金証明のすべて

建設業を始めるうえで、「500万円の資金がないと建設業許可は取れない」という声を耳にすることがあります。確かに、一定の資金的基盤は求められますが、その意味や正確な要件を理解している方は多くありません。本記事では、「500万円の資金要件」とは何を指すのか、どう証明するのか、そして「見せ金」のリスクまでを含め、制度に即した形で詳しく解説します。

目次

建設業許可における「500万円の資金要件」とは

一般建設業に必要な財産的基礎

建設業法に基づく一般建設業許可を取得するには、以下のいずれかの「財産的基礎」を備えていることが求められます。

  1. 直近の決算において、自己資本が500万円以上あること
  2. 申請時点で、500万円以上の資金を実際に保有していること(金融機関の残高証明書等で確認)

この資金要件は、建設業者として工事を適切に遂行し、取引先に対して支払いを履行できる財務的安定性を確認するために課されています。500万円という金額自体は、工事の規模とは直接の関係はありませんが、社会的信用の最低基準として位置づけられているのです。

自己資本か、実際の資金か

自己資本で証明する場合

自己資本とは、会社が持つ資産から負債を引いた「純資産」のことです。会社がこれまでの営業活動などを通じて蓄積してきた内部資本を指し、財務的な健全性を示します。

この場合、直近の決算書(貸借対照表)で、純資産が500万円以上であることが必要です。設立1期目などで決算書がない場合は、税理士の作成した資産証明書が必要になります。

実際の資金で証明する場合

資金を現に保有していることを示す場合は、金融機関の「預金残高証明書(原本)」が主な証明書類となります。申請日から1か月以内に発行されたもので、名義人は必ず申請者本人(法人または個人)である必要があります。

一方で、銀行から「融資を受ける予定」や「出資を受ける予定」といった書面(融資確約書など)は、原則として資金要件の証明として認められません。あくまで「実際に口座にある」ことが確認できる必要があります。

「見せ金」は絶対NG!制度的にも危険なリスクとは

見せ金とは何か?

「見せ金」とは、許可申請のために一時的にお金を用意し、残高証明書を取得した後にすぐ返金してしまうような、形式的・実態のない資金操作のことを指します。これは法律上、重大な虚偽申請に該当します。

見せ金が発覚する主なケース

  • 残高証明発行直後の出金履歴が不自然(申請直前に入金、直後に出金)
  • 税務調査での指摘
  • 金融機関とのやり取りで矛盾が露見
  • 内部告発(元従業員・元協力者など)

見せ金のリスクは想像以上に大きい

  • 許可の取消処分や営業停止
  • 建設業法違反による罰金・懲役等の刑事罰
  • 融資拒否や金融機関からの信用喪失
  • 関係者間のトラブル・訴訟リスク

【ひとことコメント】
一時しのぎのつもりで見せ金に手を出すと、許可が取れても長続きしません。資金の実態を伴う経営基盤の整備が、建設業の成功のカギです。

自己資本が足りないときの正攻法:資金調達手段

銀行融資や日本政策金融公庫

信頼性の高い資金調達手段として、最も現実的なのが金融機関からの融資です。特に日本政策金融公庫の「創業融資」制度は、建設業を始める個人事業主にも広く利用されています。

融資を受けた資金が入金された後、預金残高証明書を取得すれば、資金要件を満たす証明になります。

地方自治体の融資支援制度

各市区町村でも独自に「中小企業融資支援制度」や「創業支援資金」などの制度があるため、地域の商工会議所や金融機関に相談してみましょう。

クラウドファンディングやエンジェル投資家

これらの手段で資金調達した場合でも、要件を満たすには、実際に資金が口座に振り込まれ、金融機関の残高証明書で裏付けられる必要があります。契約書や見込みだけでは不十分です。

特定建設業許可に必要な資金要件はさらに厳格

特定建設業許可の基準

元請として下請契約を1件4,000万円(建築一式なら6,000万円)以上で請け負う場合は「特定建設業許可」が必要です。この許可では、さらに厳しい財産的基礎が求められます。

  • 資本金:2,000万円以上
  • 自己資本:4,000万円以上
  • 流動比率:75%以上
  • 欠損額が資本金の20%以下

【注意点】
財務内容が基準を満たしていなくても、今後の改善計画や資本増強計画によっては取得できる場合もあります。専門家に相談のうえ、早めに準備を始めましょう。

許可取得後も継続的な管理が重要

許可は一度取れば終わりではありません。建設業許可は5年ごとに更新が必要で、その他にも決算変更届などの提出義務があります。

また、経営業務の管理責任者や専任技術者などの人的要件を欠いた場合や、重大な法令違反があった場合には、許可取消・営業停止のリスクもあります。

日々の経営の中で、「財務の健全性」「法令遵守」「適切な手続きの継続実行」を怠らないことが大切です。

まとめ:500万円の資金要件は“信頼力の証明”

建設業許可における「500万円の資金要件」とは、経営の安定性と信頼性を測る重要な基準です。この金額を単なる“壁”と捉えるのではなく、健全な経営体制を築くための“土台”と考えましょう。

見せ金や不正手段に頼るのではなく、正しい方法で資金を準備し、証明することが、事業の信頼と成長に繋がります。

許可取得を目指す際は、資金調達・証明方法・必要書類について、行政書士や金融機関と連携しながら、着実なステップを踏んでいくことが成功のカギです。

監修者プロフィール

西條 朋美(にしじょう ともみ)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

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