MENU

決算変更届(事業年度終了届)とは?提出漏れに要注意!正しい手続きとリスクを徹底解説

建設業許可を受けて事業を営んでいると、事業年度が終わるたびに提出しなければならない書類があります。それが「決算変更届(事業年度終了届)」です。
この届出は、単なる事務作業ではなく、建設業法で定められた法律上の義務です。提出を怠れば過料が科されることもあり、許可の更新や社会的信用にも関わる大切な手続きです。
ここでは、初めて提出する方でも迷わずに対応できるよう、法律上の根拠から、提出期限、必要な書類、未提出時のリスクまでを分かりやすく解説します。

目次

決算変更届とは何か

建設業者が毎年行うべき重要な届出

決算変更届は、正式には「事業年度終了届出書」といい、建設業法施行規則第3条の2に基づいて、建設業許可を受けている業者が毎事業年度終了後に提出することが義務付けられています。
行政庁はこの届出を通じて、業者の経営状況や工事実績を把握します。許可を持つ業者は、一定の技術力や財産的基盤を備えていることが前提とされていますが、それが継続しているかどうかを確認するために、この届出が必要なのです。

届出には、当該事業年度に行った工事の経歴や完成高、財務諸表などが含まれます。これにより、経営状態や工事実績が行政に正しく伝わり、必要に応じた指導や監督が行われます。つまり、この届出は建設業全体の健全な運営を支える重要な役割を果たしています。

なぜ必要なのか?

  • 経営状況の透明化とコンプライアンス向上
  • 許可の更新や経営事項審査(経審)など今後の手続きに不可欠
  • 行政による監督指導のベースとなる情報提供

行政庁は、提出された情報をもとに許可の維持条件を確認し、適切な建設業運営がなされているかをチェックします。

提出期限と法律上の位置づけ

提出期限:事業年度終了後4ヶ月以内

提出期限は「事業年度の終了日から4か月以内」とされています。たとえば、3月末決算の会社であれば、7月末が提出期限です。この期限は全国一律の原則ですが、提出方法や受付体制は都道府県ごとに異なるため、必ず自社の許可を受けた行政庁に確認する必要があります。

法律上の根拠は、建設業法施行規則第3条の2で定められ、これに違反した場合には建設業法第50条に基づき「10万円以下の過料」が科される可能性があります。ここでいう「過料」は刑罰の一種である罰金とは異なり、前科にはなりませんが、行政上の制裁として事業に悪影響を及ぼすことがあります。

法的根拠と違反時の取扱い

  • 建設業法施行規則第3条の2により、決算変更届の提出が義務化
  • 提出を怠った場合、建設業法第50条に基づき「10万円以下の過料」(行政罰)が科される可能性があります
  • 悪質な未提出や虚偽の報告は、建設業法第29条に基づく許可取消処分の対象にもなり得ます

未提出のリスク

許可の更新申請に影響

決算変更届を提出しない場合、過料だけでなく、許可の更新に影響します。建設業許可は5年ごとに更新が必要ですが、その際に過去の決算変更届の提出状況が審査されます。提出が滞っていると、更新申請が受理されず、最悪の場合、許可が失効して建設業を続けられなくなる恐れがあります。

社会的信用の低下

さらに、決算変更届は取引先や金融機関に対して経営状況の透明性を示す役割も持っています。未提出は「コンプライアンス意識が低い会社」という印象を与え、信用低下や融資審査での不利につながる可能性があります。公共工事の入札を目指す場合にも、経営事項審査(経審)の前提として決算変更届の提出が必要となるため、提出漏れは事業機会の損失にも直結します。

必要書類と作成時の注意点

決算変更届に添付する書類には、工事経歴書、完成工事高内訳書、財務諸表(貸借対照表や損益計算書、注記表、株主資本等変動計算書など)が含まれます。中小企業者の場合、キャッシュフロー計算書は原則として不要です。これらは会計帳簿に基づいて正確に作成しなければなりません。

書式は国土交通省ではなく、許可を受けた都道府県のウェブサイトや窓口から入手します。自治体によって様式や記載方法が異なる場合があり、オンライン提出に対応しているかどうかも自治体ごとに違います。初めて提出する場合は、早めに確認し、期限に余裕を持って準備を始めることが重要です。

基本の提出書類一覧(都道府県により異なることがあります)

書類名内容概要
工事経歴書受注した建設工事の実績や完成高を記載
財務諸表(BS・PL)貸借対照表・損益計算書
注記表会計方針などの補足情報
株主資本等変動計算書資本金・利益剰余金の変動情報
完成工事高内訳書元請・下請などの区分を記載

※中小企業者の場合、原則としてキャッシュフロー計算書は不要

書類の入手先と作成のポイント

  • 書式は建設業許可を受けた都道府県庁のウェブサイトまたは窓口で入手
  • 一部の自治体では電子申請にも対応
  • 書類は会計帳簿に基づいて正確に作成
  • 虚偽記載は許可取消のリスクあり

書類作成の不備を防ぐためにも、専門家のサポートを受けることが有効です。

専門家に依頼するメリット

決算変更届は、単に数字を記入するだけの作業ではありません。財務諸表の正確性や法令適合性が求められるため、会計や建設業法の知識が必要です。税理士や行政書士などの専門家に依頼すれば、法律に沿った正確な書類作成が可能になり、期限内の提出が確実になります。また、法改正や行政の運用変更にも対応してもらえるため、安心して本業に専念できます。

1. 正確で迅速な書類作成

税理士や行政書士に依頼することで、書類の整合性を確保し、ミスのない状態で提出が可能になります。

2. 最新の法令・通達への対応

建設業法は改正が多く、都道府県ごとに運用差もあるため、プロに任せることでリスクを回避できます。

3. 経営の効率化と安心感

多忙な経営者にとっては、提出業務をアウトソースすることで、本業に集中できる時間が増えるという副次的効果もあります。

まとめ|決算変更届は「信用と許可の維持」に直結

決算変更届は、建設業者にとって「許可の維持」と「信用の確保」に直結する重要な義務です。建設業法施行規則第3条の2に基づき、事業年度終了後4か月以内に必ず提出しなければなりません。未提出は過料や許可更新の不受理、信用低下といった深刻な結果を招く可能性があります。初めての提出で不安がある場合は、専門家のサポートを受けながら、正確かつ期限内の提出を心がけましょう。それが、健全な経営と将来の事業発展につながる第一歩となります。

疑問や不安は、専門家に直接聞くのが一番です。
まずは、お気軽にご相談ください。

監修者プロフィール

小林 正樹(こばやし まさき)
行政書士
長野県行政書士会所属
MACKコンサルタンツグループ 小林行政書士事務所

制度を正しく理解し、事業者の皆さまが安心して事業を継続できるように——。そのお手伝いをするのが行政書士の役目です。建なびでは、読者に寄り添った解説を心がけています。ぜひご活用ください。

目次